獅子頭伸のフランス情報;パリのつびぶやき。

在仏約40年の経験を生かしてパリを中心とした文化社会情報をお伝えしていきます。k

パリに暮らして40年以上が経ちました。情報誌パリ特派員、日本映画祭のプログラムディレクタ-などをしてきました。恐らくパリに骨を埋めるでしょう。日本映画紹介の仕事は続けています。年齢は還暦過ぎてから忘れています。そんな日本人男が触れる日常や特にカルチャ-シ-ン、またパリから見た日本の事などを書いていきたいと思っています。ヨロシク。

パリは季節のない町

 僅か約20ユ-ロの小切手が不渡りになり仏中央銀行から取引停止処分を受けた事件は一件落着した。しかし銀行がなんの予告注意もなく不渡りにしのは許せないので、少しくらい長引いても戦うつもりでいる。
 
 しかし余禄もあった。
 事情を知った市の福祉課が4週間に渡って週50ユ-ロを現ナマで支給してくれる事になったのである。ありがたい話である。
 
 ところが今度は同じ銀行の系列であるインタ‐ネット プロバイダ-から1万円という法外な請求があった。支払はなければ接続不能にすると脅かす。
 何でそんなに高いのか聞くと、2017年1月に俺からの申請でより料金の高い契約内容に変えたからだという。そんなことを頼んだことは一切ないというのに、コンピュータの画面に出てくるからと言い張り続ける。頭にきた。
 客の言い分よりもパソコンの記録の方を完全に信じ切っている。機械というものはちょとした作動の違いで間違った情報を残すこと事もあり得るという想像力を完全に欠いてしまっている。
 担当者の頭がもうロボットとして訓練されてしまっているのだ。
 また一戦構えなければならないのかと、考えただけで憂鬱になるが、ここは戦わなけれは居場所を失う社会だから。やるしかなし。

 
 日本人の謙虚さなど考えていたらとんでもない目にあわされる。
 フランス人の脳内には謙虚の部品など組み込まれていないである。
 
銀行の事件が切っ掛けとなって、スタインベックの名編「怒りの葡萄」を読みたくなった。仏語版しかないので読了には時間がかかっているが、すばらしい。


 今、欧米では難民が大きな問題となっているが、米国の内部が生み出した悲惨な国内難民の歴史があったのである。胸に詰まる場面が幾つもある。


 この夏のパリ近郊の天候は最低だった。雨で寒い日が多かった。


 泉谷しげるは「季節のない町に生まれ、季節のない町の育ち、」と歌ったが、それはパリの町にも似ている。


 8月も末。もう長い夏のバカンスは終わり。


 9月に入れば芸術シ-ズンの幕開けで、演劇、映画、美術、音楽の華やかな出し物が目白押しになり、バカンスでレフレシュしてきた美しいパリジャンが目立つようになる。
 

 かくしてフランス人の人生は過ぎていくのである。完。

7月と8月の日付ページのない手帳

  装丁がしゃれていたのでペラペラめくっただけで買った手帳に7月8月の予定を書こうとしたら、この二ぺ―ジがすっぽり抜けている事に気づき吃驚仰天した。
 
 フランス人の夏バカンス観もここまでくると徹底しているというか。
3週間の休みは常識だから.これでいいのかもしれない。勿論一年を通した手帳もある。
 
 毎夏恒例の民族大移動が本格化して町は静かに眠り始めている。
 プ-ルにいったら猛暑なのに人がまばらにしかいなかった。バカンスに出かけてしまった人が多いのだ。子供もほとんどいなかった。


 大女性政治家シモ-ㇴ ヴィエ-ュが死んだので追悼を書くつもりでいた。
 ところがフランスは突然何が起こるか分からないドラマの都会だ。
 突然、銀行取引停止通知の手紙が届きドキモを抜かれた。
 通常フランスでは小切手が不渡りだったら、まず銀行が予め警告し、それが不渡りになっても決済するまでには30日間の猶予が与えられている。なのにである警告予告と停止処分の手紙を出した日付が同日となっていた。しかも小切手の額は子供の小遣い程度の少額である。担当者が夏ボケだったらしい。
 頭にきて係の部署に電話したが、担当の女がこっちの話は全く聞かず一方的にまくしたてるばかり。結局電話で大喧嘩になり相手は何もしゃべらなくなった。
 一般に銀行を怒らせると怖いという先入観があると思う。
 僕の場合は500ユ-ロまでの赤字を許されていた。
 だが、これがいけなかった。長い内に実は借金という気持ちが薄れていて気の緩みで今度の失敗に繋がった。
 地位の上のコンサルタントに相談したが銀行取引停止処分になったから赤字許可も自動的に停止になるという。困った。


 銀行の規約を精読すると、間違っていたのは即座に停止処分にしたアホ担当者だと分かったものの中央銀行まで情報が行ってしまっているで手の打ちようがないとの事。
 いや落ち込みましたね。気持を立て直して新たな対応を考えねば。


 パリに暮らす日本人の情報記事には、料理、ファッション、パ-ティ-など何時もバカンスみたいなのが多いけど、この大不況で日本とのコ-ディネ‐タなどの仕事もなくなっているパリで重役級の駐在人ならいざ知らず、そんな楽しいだけの生活がどうしてできるのか、いつも不思議で仕方がない。
 フランスで20年以上暮らし、その後映画会社を設立して、100歳で他界した好色人を知っているが、その男が実家からの仕送りが途絶え赤ん坊のミルク代が買えず公園で呆然としていた時があると語ってくれた事がある。そんなものだろうと思うのだが。 
 
 パリでは余程の官僚でもない限りラフな平服で働きに行く人が殆どなので、確かに表面的には仕事してるようには見えない。
 どうするか、対策は考えてみるしかない。すぐカネになる仕事と言えばラ-メン屋くらい。しかもすごい低賃金長時間労働、しかも労働許可書がなければ足元を見られて西村健太ではないが「拷問列車」らしいい。
 
 しかし、こんな事件など、先日6月30日に他界したシモ-ㇴ ヴィエ-ュのすごい人生に比べれば、不安になるのが馬鹿らしい。
 
 彼女は1927年南仏二-ス生れ、フランスには子供時代の名前というのがあって、それがユダヤ人そのものの名前でジャコブ。父親は優秀な建築家で男女4人兄弟。


 1944年4月ゲシュタボに逮捕され母親と妹と3人は家畜輸送用の貨物列車に乗せられてポ-ランドにあるユダヤ人強制収容所アウンシュビッツに送られた。16歳から18歳の時期である。母親と妹はそこで死亡、父親も他の兄弟も別に逮捕され強制収容所で死亡。生き残ったのはシモ-ㇴだけである。
 戦後解放後はエリ-ト高等学院サイエンスポを卒業して政治家の道を選ぶ。
 当時は稀な女性政治家だったが男性議員と戦い、女性の流産を認めさせる法律を制定、また二度と戦争が起こらないようにとEUの創出にも大きな役割を果たし、女性で初めてのEU議会の議長に選出されている。フランスで最も敬愛されている政治家の一人だった。
 フランスにはこういう政治家が活動しているから凄味がある。
 日本のチンピラ極右みたく戦争体験もないのに旧大帝国日本を空想してる無責任な人間の屑とは体験のすさまじさ知性教養が違い過ぎる。

 
 マクロン大統領はビクトル ュ‐ゴなどが安置されている偉人の殿堂パンテオンに埋葬すると発表。女性としてはキュ‐リ夫人などに次いで3人目だ。この決定を国民は大歓迎している。


 某日。友人の友人の絵画展のオ-プニングパ-ティ-で日本人初老の女性と話す機会があった。
 なんと彼女は日本語を忘れてしまって真面な日本語会話ができないという。
 確かに日本語が出てこない。母国語は絶対に忘れないと信じた来たので、この経験には驚いた。そいう事があり得るのだとは思っても見なかった。


 最近のルモモンド紙で作家のル クレジオがイギリスとアメリカの軍事基地の為に祖先の土地を追放されデラジネとなり貧困と絶望の生活を送っている西インド諸島の原住民の現状を報告している。
 白人大国の人種差別と過酷な暴力を告発。新植民地主義と厳しく批判している。筋金入りの作家である。


 マクロン大統領はトランプ大統領をフランス革命記念日に軍事パレ-ドに招待、その前夜はエッフェル塔二階にある最高級フランスレストランで夫人同伴の4人だけで会食、その前にはアンゲル マルケスとも会談、なかなか見事な外交手腕を見せた。
 軍事パレ-ドにはアメリカ海兵隊も参加、トランプは終始ご満悦の様子でマクロンとの友情を盛んに演出していた。
 当確早々、純金のゴルフアイアンを献納した安部とは大変な違いだ。粋さが段違い。
 小さな独裁者安部の支持率はもっと下がって欲しいと思う。


 手帳には7月8月のペ―ジがないけど、それでも日程を組んで金策しなくては。そうしなければ生きていけないぜ。

大西洋岸のバカンス村、ネット右翼やセザンヌ展の事など。

 イル,ド ,レでの一週間バカンスから帰ってきた。
 米国西海岸まで直航海できるフランス北部の先端にある大西洋の海岸は遠く広々として、世界の懐に抱かれている気持ちがした。岬には小さな燈台が建っていた。


 バカンス客の大半は高齢の年金生活者だった。初め200人位の高齢者グル-プが一緒に夕食をしている光景を見た時は圧倒された。大勢の爺さん婆さんが一堂に集まって晩飯を食っている。すごい迫力だった。
 
 バカンス村ODESIAは数百軒の平屋一個部屋からなっていて、その他にバ-のテラス、卓球台、娯楽室などがあった。浜辺までの道のりは10分くらいで松林が茂っていた。眼前に広がる大西洋がを見た瞬間、その広大さに感動した。


 食事は朝8時半、昼12時半、夜20時半と決まっていた。
 献立はフランス料理のフルコ-スでアントレ、主食、デサ-ト。それと小籠に食べ放題のフランスパン、更にはレッド、ホワイト、ロ-ズのワイン、それにデサ-トにはチ-ズの盛り合わせと菓子類かアイスクリ-ㇺなどの甘いものが必ず出た。
 毎晩でるチ-ズが同種で閉口したが、フランス人は喜んで食べていた。
 平均一時間超の食事だから、隣り合わせた人とは否応なく会話する事になる。フランス人は沈黙が苦手だ。


 昔、暗黒舞踏の創始者土方巽が婆さんは面白いというようなことをいっていたと思うが、女を捨てて図々しくなった婆さんとの会話はフランスでも面白かった。たわいもない冗談で笑ったが、そんな最中に時として少女時代の片鱗を見せる。


 彼女達から(prendre le cafe des pauvres=貧しい人々のカフェ)という表現も教えてもらった。これは金欠でデサ-トを注文出来ない恋人同士が相手と交わす言葉だそうで、デサ-トに代えてセックスしようという隠語表現とか。婆さん達は下ネタが好きだった。
 その内の一人に「tu veux prendre le cafe des pauvres」と声をかけられた時は喉が詰まった。


 また、隣に座ったキャバレ-とサーカスの芸人という腹の出た中年男が「一人できてるのか」と聞いてきたので、「女を紹介してくれよ」と返すと、「ここにはいくらでもバーゲンセール中の女がいるじゃないか。皆一人身だ。好きなの連れて行けよ」と言った。
 それを耳にした婆さんの一人が、「そんなことを言い続けたらだだじゃおかないよ」とすごんだ。
 更に、この男は一週間のバカンスに400万ユ-ロを使ったという話をテラスで耳にして腹を立をたてていたので、「じゃ、あんたが万が一宝籤で億の大金を手にいれたらどうするのか」と聞くと、「まず最高級車を買って、自分でデザインした」家を建てて、すごい美人の愛人をつくる」だと。「じゃ奥さんはどうするのか」というと「最も醜い男を送呈する」。そして「自分には大金を使う計画案はあるけど金がない」と周りを笑わせた。彼の女房はやはり芸人で肥満型の旧ュ-ゴ出身の女だったが、そうした旦那を馬鹿にした目線で見ていた。


 夕食後は必ず余興が組まれていた。ゲ-ム、ダンス、鉄玉投棄ゲ-ム、宝籤大会などなど。食事から遊びまで完全に人任せ。何もしないのがフランス一般流バカンスなのだ。海で泳ぐ人など稀少だった。


 ある日、砂浜で一人寝そべっている若い女性がいた。体全体のプロポ-ションが抜群でだった。乳房は小粒で腰から臀部にかけての稜線が性欲を刺激する。
 脚部はすらりと美しかった。
 大西洋の水温は冷たくて、泳ぐ人は少なかったが、彼女は日光浴が一段落すると、時々、海に入り平泳ぎで泳いだ。髪は薄い金髪系だったと思う。知り合いになりたいと思ったが、きっかけを作れるような隙はなかった。


 後日、サン マルタンという瀟洒な港町にいきイワシの塩焼き13ユ-ロのを食べていた時、彼女が母親らしい女性と散歩しているのを見た。シンプルな花柄のワンピ-スが海からの風に揺らいでいた。ただただ可愛らしかった。
 
 しかしと、別の思いが頭を横切る。
 あの美しさ、性的魅力も後40年も経てば今バカンス村にいる婆さん達と同じようになるのだろう。人の宿命は過酷だ。


 フランスは大統領が若いマクロンになってから社会の空気がすごく変わった感じがする。暗かった世相に明るさが差し込んでいる。
 様々なデジタル技術を活性化させようという政策が大々的に打ち出され、デジタルビジネスを開拓しようという希望をもつ若者が増えている。景気も最近20万人雇用が増加、年内には60万人の増加と明るい。


 国を代表する人物の顔が変わると、こんなにも社会の空気が違ってくるものか。驚いている。
 あの安部の焦点の定まらないぐちゃぐちゃの顔を見ていると暗い気持ちになる。嘘で固めた私欲私利の不透明な相貌。
 でも嘘のツケは必ず回ってくる筈だ。安部支持者のネット右翼の連中がうろたえ始め、滅茶苦茶を言いふらしているが、嘘を永遠に隠し続ける事は出来ない。


 日本にも新しい動きがで始めているようで嬉しい。


 東京新聞のジャ-ナリストの望月衣塑子さんなどはフランスの気鋭ジャ-ナリストと互角に勝負出来る。すごく勇気がいるだろうが、本来なすべきジャ-ナリストの仕事をしている。
 サラリ-マン型記者とは違って権力を恐れない女性ジャ-ナリストが登場したというのは素晴らしい。エールを送りたい。
 レイプを勇気をもって告発した詩織さん、文科省事務次官だった前川さんのようなサムライの登場。
 
 小さな独裁者安部の崩壊が始まったのかもしれない。
 
 安部が長期政権だから日本は安定しているという連中がいるが、政権の長さを尺度にすれば独裁政権で権力を握って手放さない政治家はいくらでもいる。アルジェリアやトルコなどは選挙はあるが永久政権である。そしてその腐敗は凄まじい。長さよりも政治の内容が大事なのだ。
 跳梁跋扈するネット右翼のデマの酷さは相変わらずだが安部の弱体化で、うろたえている面も見える。
 フランス女との関係でフランスの精神科医に相談したことがあるが、その時の診断が忘れられない。こういった。
 「金銭の損得関係の上だけで成り立っている人間関係は必ず破局で終わる。」
 ネット右翼の権力との関係も同じ原理で成り立っているだろう。
 ボウフラは水が洗浄されれば消えていく運命にある。


 バカンス村で中年の米国女性とも言葉を交わしたが、彼女はトランプがTVに映るといすぐ消すといっていた。
 思えば金塊のゴルフをトランプに奉献するという屈辱外交をやってのけたのは、世界の中で安部一人だけであった。


パリのオルセイ美術館では秋まで大セザンヌ展が開催中で必見と評判。
安部など大きな世界の歴史からみれば卑小な生き物に過ぎない、と思う。完