獅子頭伸のフランス情報;パリのつびぶやき。

在仏約40年の経験を生かしてパリを中心とした文化社会情報をお伝えしていきます。k

パリに暮らして40年以上が経ちました。情報誌パリ特派員、日本映画祭のプログラムディレクタ-などをしてきました。恐らくパリに骨を埋めるでしょう。日本映画紹介の仕事は続けています。年齢は還暦過ぎてから忘れています。そんな日本人男が触れる日常や特にカルチャ-シ-ン、またパリから見た日本の事などを書いていきたいと思っています。ヨロシク。

パリの亡命者群像と日本ブ-ム。

 ブログに何をどう書けばいいのかと考えたら迷子になってしまった。しかもコロナとインフルエンザのワクチン注射を一緒にやってもらったら微熱がでて寝込んだ。挽回しようと今回のブログは長くなってしまった。スミマセン。


 米映画「バービ」と「オッペンハイマ-」が大評判の話題になったのはつい最近だったが大分の前のような気がする。時代の変化は一段と早くなった。


 フランスはすでに冬時間に変わった。冬生活に合わせて時間を1時間早める。
肌寒い小雨が牛の小便のように途切れなく細々と降り、夏は22時位まで明るいが、最近は17時ころには暗くなる。
 フランスに春の季節はないと行ったのはだ挑発醜聞好きの人気作家ウ-ルベックだったか。確かパリで季節はいきなり変わる感じがあって変わり目は曖昧だ。
 鬱の気分になりやすい天候が増えた。


 一流週刊Le pointは最新号で「世界の新しい勢力配置」の特集を組んだ。地球を囲む指導者の国別顔ぶれはEU,米国、英国、仏、イラン、トルコ、中国、ロシアだ。見出しは「孤立する西欧と対立する攻撃的な独裁者たち」。
 しかしスペイン、伊、日本、北欧、東欧は入っていない。仏人はどうしても西欧中心主義の思考が抜けないようだ。


 独裁者プ-チンが国連承認の独立国であるウクライナを襲った侵略戦争は勇敢なウクライナ人のレジスタンスで短期で終わらず今も続き2年目の冬を迎えつつある。


維新の元国会議員鈴木宗男は喧嘩両成敗などという侵略の事実を無視した愚かな発言をし、プ-チン万歳の声を上げているが、お前、政治反対者を投獄したり政敵を密かに暗殺したりしている独裁者ロシアの現実を考えたことがあるのか、と思う。


 だがゼランスキ-大統領は反転攻撃が成果を出せなかったことから苦境に追い込まれているようだ。あれほど民主主義の英雄と称賛されていたのに、最近はネガティブな評価も目立っている。マスコミも政治家や評論家なども状況が悪くなればクルリと態度を豹変していく。こういう連中を素朴に信用すると平気で裏切るから危険である。
 ウクライナがロシアに敗北したら自由主義世界は大変なことになるだろう。


 10月7日にはイスラエルの屈辱的な植民地化統治に対抗してパレスチナの町ガザを拠点に組織された反ユダヤ主義のパレスチナ人自治政府ハマスがイスラエル国内で1400人を殺戮、200人超の人質をとるという大規模なテロ攻撃を起こした。同国史上初めての悲劇である。


 報復として現イスラエル政権の極右主義者ネタニヤフ首相.はハマス壊滅を宣言。パレスチナに対しすさまじい空爆を連日連夜開始。
 投下した爆弾はロシアがウクライナで約一年間で落とした爆弾の数を遥かに上回るといわれる。現在は重装備の地上軍部隊も投入、パレスチナの街は廃墟と化しつつある。


 イスラエル政府の中には戦争開始時「パレスチナ人は犬畜生と同じだから容赦しない」とか「原子爆弾を投下して一気に壊滅させればいい」と発言する閣僚がいた。


 このイスラエルの攻撃は目下、子供の死者3000人超の以外、約一万人に上るパレスチナ人の死者を出している。
 血だらけの子供や家を破壊され逃げ惑う悲惨なパレスチナ人の映像をTVで見ていると嘔吐をもようす。


 幼い頃レイプされたり暴力を振るわれた子供は大人になってから自分がされたのと同じこと繰り返すという説があるが、この戦争をみているとユダヤ人もそうではないのかという気にさせられる。
 ひどい人命の軽さだ。首相ネタニヤフ含めて極右のユダヤ人は人種差別主義者だと考えて間違いない。


 フランスにはロシア人もウクライナ人も多く住んでいる。


 僕の下のアパート一階にもウクライナ人の避難民家族が住んでいる。子供は18歳蔵の娘と20歳くらいの青年。誰もフランス語が話せず、目立たないように暮らしている。
 フランスで金髪青眼のファッションモデルにはウクライナ出身の女性が多いといわれている。


 ロシア人についていえばエッフェル塔の近く、アフリカ、アジア芸術の大コレクションで有名なブランリ美術館に隣接して、特徴あるロシア風建築のロシア正教徒教会がある程である。もっともスパイの巣窟という噂もあるが。


 更にフランスはユダヤ人の人口もアラブ系人の人口も欧州最大である。
 だから、この二つの欧州での戦争の影響はパリ社会を直撃している。
 先日はユダヤ人の老女がアラブ系の青年に刺殺され、ユダヤ人の施設にはユダヤのシンボルでナチスがユダヤ人の証明に上着に縫い付けたことでも知られるデビット星形のペンキ絵が壁に塗られる事件も起きている。
 反ユダヤの事件は10月7日以来1400件の上りパリのユダヤ人は第二次世界大戦以来の恐れを抱いているとわれる。
 一方、アラブ人についてはイスラム=テロリストとの安易な偏見で見られる傾向が強く疎外感を抱いている人が多いと思う。


 先日は反ユダヤ主義に反対する政府主導の大きなデがあり、同時にパレスチナ人を支援し停戦を求める極左系の大きなデモがあった。


 パリでの人種差別相関図は複雑だ。


 僕の親友モアはアルジェリア系フランス人だが彼の友人、つまり僕の友人の友人であるアラブ人のカデはパレスチナはイスラエルの野外刑務所だとユダヤ人を自殺する時まで憎悪していた。だけどモアの奥さんのは一流科学雑誌のjジャ-ナリストで彼女の親友は元医師のユダヤ人夫婦だった。


 僕自身も親友はアラブ人のモアだったが、ユダヤやチュニジア女性の愛人がいた時期がある。


 目下フランスはこの戦争以外にもインフレ、移民問題、極右極左の台頭、学校のいじめ問題などがあり社会には鬱屈感がある。パリ市民の笑顔も稀だ。
 日本人にとっても円安だし、パリに憧れ能天気なパリ生活をする時代は終わっている。


 人間は不安や鬱屈が高じるとセックスにはけ口を求めるのだろうか。
 芸能界に憧れる一般女性が自分のエロ写真を売るサイトONLYFANYやポルノビデオを製作して直接稼ぐサイトMYMCが人気話題となっている。


 ところが、こうした「混沌とした戦争の時代」を背景にパリでは日本文化に対する人気が高まっていて、見逃せない現象になっている。
 この間、まず大クラッシックコンサート会場で本格的な能舞台を設置してKATAYAMA
流能の公演があり反響を呼んだ。能は拍手しないが、パリの観客は感動し喝采。
 映画では北野、是枝 濱野などの監督以後、僕は聞いたことがない若手新人監督の映画作品が短い興行ながらちょくちょく上映されるようになっている。


 更に宮崎駿監督の新作アニメ、仏題は「le garçon et le héron(少年とサギ鳥).」がなんと全国1122館で11月上旬より公開、マスコミが大々的に取り上げるなど大評判となっている。「幻想的で神道と西洋の融合.」などとフランスならではの評価も出ている。


 また日本文化の震源地、日本文化会館では山田洋二監督の「フ-テンの寅さん」全作品特集がヒット。リクエストに応えて同じ番組が秋から再度組まれる。
 森田芳光.監督の映画特集も好評だった。
 女性ダンサ-Midori Kurataのダンスと演劇を組み合わせた舞台公演「家族写真」も満席で暖かい拍手はを受けていた。
 マリオネット人形劇団「糸座」の公演は500席満席で絶賛された。


 中でも特筆すべきは日本料理店と日本食料店の人気。日本食料店の数も増えている。


 最初にパリに来た頃の約40年前には「花房」というステ-キ鉄板焼き店があるだけで、フランス人は寿司、ラ‐メンや餃子だどは食べないといわれていたが、今やどこも日本料理店はどこも人気。中でもオペラ大通り横手にあるrue st anneは料理店、食品店街として有名になっているが週末には行列が出来る店が目立つ人気だ。
 先日は食品店と和食屋を合わせた洒落た新型の日本料理店「いらっしゃい」がパリの中心1区、ピノ同時代美術家の隣にオープンして話題になっている。


 日本文化の人気現象、一言でいえば今の日本の現代文化の素晴らしさをフランス人が発見したということに尽きる。
 日本語を話せるようになりたいというパリジャンヌにも最近よく出会うことがあって話を聞くと、彼らの大半はアニメや漫画が切っ掛けとなって日本に興味をもったという人が多かった。すごい影響力である。


 しかし、それだけでなく「この暗く混沌とした戦争の時代」、日本は伝統とハイテクが調和した戦争のない自由で平和な国だというイメ-ジも大きく貢献している、と思う。
 自由と平和の幸せは失いたくない。