獅子頭伸のフランス情報;パリのつびぶやき。

在仏約40年の経験を生かしてパリを中心とした文化社会情報をお伝えしていきます。k

パリに暮らして40年以上が経ちました。情報誌パリ特派員、日本映画祭のプログラムディレクタ-などをしてきました。恐らくパリに骨を埋めるでしょう。日本映画紹介の仕事は続けています。年齢は還暦過ぎてから忘れています。そんな日本人男が触れる日常や特にカルチャ-シ-ン、またパリから見た日本の事などを書いていきたいと思っています。ヨロシク。

疫病コロナ流行下のパリ、社会思想基盤の全崩壊。



東京との国際電話中、下腹部に耐えがたい激痛が走った。救急搬送され
開腹手術を受けた。肝臓入り口周辺に体石が集まっていた。石を取り除く簡単な手術だが、運悪く1カ月以上に及ぶ長期ジェネストで入院は2週間に及んだ。その間、生身を突き刺す痛みに耐え抜かなければならなかった。
麻酔をかけられる時、数字ではなく好きな音楽を選べと言われた。麻酔で無意識下に落ちていく間に聞いたモ-ツアルトのレクイエムは至上の喜び。少しづつ闇に沈んでいく陶酔感は言葉に表せない。


感染者数、一万2612人。
死者数  450人。
重症   1297人。


コロナウィルスによるフランスの犠牲者の今日現在の数字である。


感染のピ-クはまだ来てないというから、この数字が更に拡大していくのは確実だ。しかし、誰も何時ピ-クを迎えストップになるかは予想できないままである。
それどころか、逆に流行の速度は早まり汚染地域も全国に蔓延している。


マクロン大統領はconfinement「外出禁止」の声明を発表し、これは健康の戦争であると明言。
映画館やカフェ、レストラン、コンサ-トなどのイベントなど人の集まる場所は全て禁止,また許可書なく外出する事も禁止。家にいるよう呼びかけている。


この禁止令は6週間に及ぶとの予測もある。
パリ中心街のシャンゼリゼやカルチェラタン、オペラ座界隈は完全なゴ-スストタウンと化。一方、バルベスなどの大移民街では相変わらずの人出らしい。ホ-ムレスなどへの対策は特にとられていない。


小市民が多く、普通は車と人が頻繁な我が家の前の小道も死んだような静かさだ。.買い溜めなどの騒動は起こっていないものの一部のスパ-マ-ケットでは大きな買い物袋やキャディ-を手にした人々の長い行列が見受けられる、人と人の間隔も1メ-トルを保つように警告されている。 
ス-パ-マ-ケットで一人だけで従業員に対してでmerciと拍手している若いマダムもいた。
confinementの期間中、都会を離れて田舎で過ごす人も急増加、セカンドハウスを持つ人が多いフランスならではの逸話だが、第二次 大戦末にドイツ軍の脅威を受けて10万人が田舎に大移動した記録映画を放映するtv番組もみた。


フランスの識者の論調を聞いて背筋が寒くなるのは、この疫病大流行後にやってくるだろう時代に関しての事である。


グロ-バル時代の終焉、大不況到来とかは誰にでも予想可能だが、怖ろしいと思った指摘は有名極右論客の発言。


「マクロン大統領を始め自由主義のリーダ知識人が思想的支えとして1980年代までに築いてきた社会的思想基盤が全面崩壊した」。
鋭く的を射ているのではないか、と思った。


国家あるいは大権力や全体主義の力に頼らなければ生きていけない時代が来るのだろうか。
時代の変化に向けて新たな理論武装が必要な時を迎えているのは確かなようだ。
一寸先は闇である。


夜の8時半頃、外から拍手と歓声の合唱が聞こえて来た。窓を開けて首を出してみると近所のアパ-トの多くの住人が窓辺かr身を乗り出してmerci merciと拍手していた。
コロナウィルスと最前線で戦う看護婦や医師、介護人対する感謝を表した自然発生の行為だった。

paris eyese =秋から暮、パリに来る人の為の美術展。

 是枝監督「真実」が日本で公開され話題になっていると聞く。パリは未公開で日本先行上映。なのでパリでの反響はお伝え出来ない。
が、ベニス映画祭時、有力紙リベラションには酷評が掲載されて、さすがフランスでは権威主義が容易く通じないと感心した覚えがある。評はdeplaissant =「不快」、「苛立つ」といったものだった。欧米劣等感の裏返しとして憧憬主義があると感じた。河瀨直美も同根だ、と思う。


現在パリは見るべき大型美術展が目白押しだ。好み順に挙げたい。
まずは「Hans Hartung.La Fabrique du geste」展(Musée d'art Moderne de la ville de Pris,2020年3月日まで).1920年以来、情緒溢れる流動的で美しいとい抽象画を描いてきた巨匠の1969年来の大回顧展。


信じられないがフランス初というスペインの大キリスト教徒画家グレコ展。世界各国から集められた68点もの作品が一堂に展示されていて必見(グラン、パレ。2020年1月1日迄)。


歪んだ人間や事物、狂気?? 異様なシュ-レアリスム絵画で知られるフランシス、べ-コンの1971年から1992年の作品を一堂に集めた「全ての書簡、べ-コン」展(ポンピド-センタ-、2020年」1月20日迄)


ナチスに虐殺されたユダ人の記憶をもとに衝撃的なインスタレイションをはっぴょうしてきた「クリスチアン ボルタンスキ‐の時間]展(ポンピドーセンタ-2020年3月迄):


更には「レオナルド、ダビンチ」展(ルーブル美術館、2020年2月24日迄)、、「ロ-トレック」展(グランパレ、2020年1月27日迄);「知られざる歴史、モンドリアン,マルモンタン美術館、2020年、1月26日迄)


この他でも「黄金期の英国絵画展」リュクセンブルグ美術館,2020年2月16日迄、「ポップ、ファンク、バッドペインティング ツル-ズ市屠殺場、2020年1月26日迄
シャルロット ペルランの新世界]ルイヴィトン美術館 2020年2月24日迄


そして美術界の最大のイベント「国際ア-ト見本市FIAC」がこの11月17日から、、、、迄開催中,参加画廊の参加数、国籍数も例年以上で大盛況である。


しかし、入場料は約5千円と高め。パリで画廊巡りをした方が得かな、と迷っている。


世界美術界の中心地はベルリンとアメリカと言われていたが現在では既にパリに戻っているのかもしれない。

今季パリの演劇シ-ン。

 フランスの長いバカンス期が終わった。これから一気に冬に雪崩込んでいく。冬の季節との切れ目が希薄なのだ。とはいえ秋風の吹く日もある。快晴の日はパリ秋冬独特の硬質なダイヤモンドの日差しが素晴らしい。
  
 目下、今季12月末迄にかけてのパリ演劇界を彩る多種多彩なプログラムが一斉に発表されている。


 この時期来仏するカルチャ-ファンの為にも必見の作品を厳選し紹介したい。
  主な作品の写真はfestivale d'autonme à paris で検索できます。  


1、アメリカモダンダンス界の大御所マ-ス カニングハムの大特集、7本問題の作品が違った劇場で12月迄上演され続ける。
 特に勧めたいのはシャイヨ宮殿劇場 テアトルデビル、或いはシャトレ劇場での公演作品だ。いづれも市内の大劇場である。


2、米国前衛演劇界の歴史的大物、ボブ ウイルソンの新作「ジャングルブック」、11月6-8日、theatre de ville。約40年前の衝撃の処女作「浜辺のアインシュタイン」を想起させる舞台で必見、チケットは早急予約必要。


3、ポ-ランドの前衛劇団「the wooster group」の「a pink chair」11月15-17日、ポンピド-センタ-。カント-ルといっても若者は知らないと思うが故寺山修司が絶賛したポ-ランド現代劇の鬼才、新進劇団による生誕百年記念公演、すごく面白そうで期待大。


4、注目を浴びるイタリアのラジカルな新進演出家 Romeo Castelluczzのアナ-キなダンス作品「Lavita Nuova」


5;ユニ-クな新作を発表し続ける演劇集団「tg stan」がトルストイとアンナ カレリ-ナの謎に挑む「collectif」,9月11-10月6日。bastille劇場 


6、、南カルフォルニア出身の天才ダンサ-Robyn OrlinがJ ジュネの傑作戯曲「女中たち」を原作にした新作パフォ-マンス。11月4-15日、bastille劇場


7、実際に起きた集団事件とその裁判を再現したEmille Roussetのドキュメンタリ-演劇。10月19,20日、大学都市劇場。


8、Mohamed el Kitatibが離婚した両親の子供たちが体験を語る証言を構成演出する「dispute 口論」、11月8日-12月1日、ピエ-ル カルダン劇場。


9、アフリカのコンゴの演出家Faustin Linyekulaによる音楽前衛劇。11月20-23日、パリ市立劇場。


10、有名なモネの水蓮画の常設展で有名なオランジェリ美術館でglissement、「滑る」をテーマに上演されるパフォ-マンス。9月30日。


その他の注目株は
1,突飛な鎮魂歌劇、Steven Cohen公演、9月19日-23日、ポンピド-センタ-。


2、日本でもファンが多いJerom Belの新作ダンス。「イサドラダンカン」、10月3日-5日、ポンピド-センタ-。


3、漫画をモチ-フにしたJonathan Capdeville公演、11月23日-30日、ナンテ-ル劇場。


4、流れゆく時間の瞑想を主題にしたChrisoph Marthaluの舞台、11月21日、22日、ヴィレット大ホ-ル。


5、台湾の劇団、演出Wang Chia Mingによるカナダのノベル文学賞作家Alice Muuroの劇化作品、11月28日-30日、クレテイユ ア-トセンタ-。


6、作演出Stefan Kaegi;でハバナの過去と現在を語るキュ-バの若手劇団公演。10月4日-8日、オベービィエ-ル劇場。


7、現代ドイツ演劇界の俊英Frank Castorfの「演劇とペスト」。12月5日-14日、サンドニ劇場。


8、フランスのシュ-リアリスト演劇で人気の劇団Radeau公演、11月5-16日、T24劇場。


9、韓国の若手パフォ-マ-、Jama kooが見せる不況と汚職の韓国の素顔。12月4日-13日、バスティ-ユ劇場。


10、室内四重演奏者4名と舞台俳優4名を起用したCalixto Bieto演出による即興的音楽パフォ-マンス「The string Quatet "s。」。11月12-14日。パリ市立劇場。 


11、ウィリアム フォ-サイス新作ダンス公演。11月4日-11.chatelet劇場


12、パリオペラ座の男性ダンサ-トップだったダニエル ダリュ公演、11月14j-16日、大学都市劇場。


12、そしてトリは世界的知名度抜群のフランスの太陽劇団theatre soleille の新作「Electre des bas fonds,どん底のエレクトトレ」。作演出はsurface主宰者のムㇴシュキンではなく新人Simon Abkarianを起用。収穫が楽しみだ。9月25日-11月3日、バンセ-ㇴ森のソレイユ本拠地劇場。


以上である。


映画イベントではオ-ケストラ演奏付きでのチャップリンの無声映画、これまた必見中の必見、現代音楽の先鋭Lena Herzogの新作曲による「Last Whispers」がある。
他ではゴダ‐ル特集、コンコルト広場脇にあるjeu de pomme美術館での未知の映画監督『Marie Losir特集」も発見となるだろう。


更に現代音楽シ-ン、ジャズ、ロックのライブも豊かで パリの夜は眠れない。
見逃せない美術展も盛んだが、それに関しては次回で触れたい。
パリはまさに輝く文化国際都市である。完。