獅子頭伸のフランス情報;パリのつびぶやき。

在仏約40年の経験を生かしてパリを中心とした文化社会情報をお伝えしていきます。k

パリに暮らして40年以上が経ちました。情報誌パリ特派員、日本映画祭のプログラムディレクタ-などをしてきました。恐らくパリに骨を埋めるでしょう。日本映画紹介の仕事は続けています。年齢は還暦過ぎてから忘れています。そんな日本人男が触れる日常や特にカルチャ-シ-ン、またパリから見た日本の事などを書いていきたいと思っています。ヨロシク。

極右第一党躍進で揺れるフランス。

 





  外にいるのと内にいるのとでは見える風景が違う。


 今度のeu選挙で、フランスは女性党首マリンㇴ ラ ペンが率いる極右のRNが勝利。フランスは激動に揺れた。


 日本でどういう受け止め方がされているのかは分からないが、フランス社会が極右の支配下にあると想像するなら、それは完全な誤解である。


 その主要な理由は以下の点にある。
1.まずこれは政権を左右する国内選挙ではない事。
2、勝利といっても極右RN23,3%、マクロン大統領の党LREM.22.4%と僅差だった事。
3、半世紀に渡って政権を争って来た左翼の社会党と保守派右翼は完全に没落したものの、それに代わって若者の支持を受けた環境党が第三勢力13ページ%として台頭して来た事など。


 また日本の極右と重ね合わせて考えるのも間違いである。
フランスの極右と日本では本質的に異なる部分が多い。
まず欧米の極右はアメリカのトランプ大統領が好例だが白人至上主義である。白人が最も優良な人種であり世界は白人によって支配されるべきだと考える。しかし日本は黄色人種である。いわゆるカラ-ピ-プルの中にカテゴライズされる。


 トランプ大統領の選挙参謀として有名になったバノンは、女性極右党首マリンㇴ ラ ペンの選挙参謀を買って出て、なんと一泊8千ユロのパリの最高級ホテルに選挙期間中滞在した、彼女は大統領になるだろうと予言している。


 欧米の極右が躍進した原因は主にアフリカからの大量な移民の流入に対する敵対視である。これも白人主義にかかわる事で、問題になっているのはアフリカ人だからである。これもトランプ大統領が発言している事だが、アフリカの文化習慣によってキリスト文化習慣が破壊される事を危惧しているのである。


 しかし、日本にはアフリカ人大量移民の動きはない。 


 それともう一つ加えると、日本の極右は真正な国粋主義ではなく、利益の甘い汁を吸う利害集団であることは、私利私欲の事件が多い事で分かる。


 純粋右翼であればむしろ今右翼を名乗っている連中を国賊として批判するだろう。


 だから欧米での極右台頭を捉えて、日本の極右も欧米の潮流に同調したものだというなら、それは嘘か間違いのどちらかでしかない。


 フランス極右第一党という事件をめぐってtvでも様々な討論番組が組まれ激論が交わされた。
 某番組では出席者が罵詈雑言の応酬を繰り広げ、席を蹴って退席してしまうというスキャンダルも起きた。
 しかし、中では有名な社会学者エマニュエル トッドの発言が一味違って面白かった。


 「極右と戦争を短絡に結びつけるのはおかしい。それにイタリア人がイタリアは自分たちのものだといい、フランスはフランス人のものだという事のなにが悪いのか。自然な事ではないか。」


 とはいうもののスペインは極右でなく社会党が第一党になっている。


 如何にお互いを知らないかを示す滑稽なエピソ-ドがある。


 朝日新聞の記者がフランス極右躍進取材の為、党首のマリンㇴ ペンにインタビュ‐をした。そして最後に聞いた。
 「どういう国造りを目指しているのですか。」。答えはあなたの国、日本の様な国ですだった。記者は絶句した。


 朝日の記者がよく調べ勉強し無知でなければ、こんな答えを引き出す質問はしなかっただろう。朝日新聞記者は面食らったに違いない。


 だからフランスで極右が第一党になったからといって 日本以上に右翼社会になっている訳はなく、むしろ自由度とか労働条件などからいえばフランスの方が日本より住みやすいかもしれない。


 トランプの日本訪問はまったく報道されなかった。仮にこれが中国訪問だったら大ニュ-スになっていただろう。
 欧州での日本の存在感低下は余りにも著しい。

72回カンヌ国際映画祭受賞結果と現地の反響。

 カンヌ国際映画祭の影響力について2つの意見を読んだ。


 一つは是枝裕和監督の「泥棒家族」がパルㇺド-ルを受賞しなかったら、フランスで9万人以上を動員することはありえなかった。
 もう一つはペドロ アルモドバ-監督の発言で、カンヌで受賞しなかったら映画を撮れなくなるというものではないというもの。


 これだけカンヌ国際映画祭が世界で超大人気を集めるのには映画以外の強力な条件もあると思う。
 それは3sではないか。つまり5月の南仏の気候とSea海、SEX..それにSUN太陽に変わるのがSCREENである。


 72回カンヌ国際映画祭の授賞式が終わった。


 受賞結果は次のネットアドレスにアクセすれば受賞全作品の予告編と共に見れる。


 le palmarés du festival de cannes 2019 en image


 パルム ド-ルは韓国のボン ジョ-ゴ‐監督「寄生虫」で、満場一致の決定。


 下馬評に挙がっていたフランスの2人の新人監督も予想通り「ミゼラブル」が審査委員賞、女性監督の方のセリ-ㇴ シェマがシナリオ賞をそれぞれ獲得。


 この2作のパリ公開は9月で必見だと思っているが、予想に入っていなかったセネガル出身で初の黒人女性監督でグランプリを受賞したHati Diopの作品「アトランティック」が新鮮で抜群に面白そうだ。監督も英仏語堪能で格好もいい。絶対見るつもりだ。


 監督賞は日本の仏映画ファンなら知っているジャン ピエ-ルとリュック ダルデンヌのコンビ監督の新作「le jeune  Ahmed」。
 男優賞はアルモドバ-監督「苦しみと喜び」の主演男優アントニオ バンデレス、
 女優賞は英国映画「リトル ジョ-」で主演したファミリ- ビチャム。


 全体には移民、貧困、差別などの世界状況を反映して政治的な主題が目立ったという。


 上映後の記者会見もTV中継で幾つか見たが、中国系の映画ジャ-ナリストが堪能な英語力で積極的に質問する場面が多く印象的だった。


  楽しそうなので又いきたいなと思ってしまうが、朝6時起きで8時から夜中まで平均5本の作品をみて、加えて旧知を温めたり記者会見を覗いていたりしたら、もう死んでも可笑しくない年齢になったから、もうこれは無理だと思いましたね。


 ゴダ‐ル、クストリツア、それに共産党政権の迫害を受けた東欧映画が人気だった時代が懐かしい。

カンヌ国際映画祭下馬評と噂話。

 


カンヌ国際映画祭も中盤過ぎて残り後半も1週間を切った。


 傾向として受賞作品は後半始め位までに上映される作品が多いので、既に何本かの作品が受賞候補作品として下馬評に上がっている。


  期待されたJ.ジャ-ㇺシュ新作のゾンビ-映画は不評の方が目立つ。
 受賞レ-スからは外れたと考えてよさそう。


 フランス新人監督の2作が絶賛されている。
 一本は黒人系監督Laji Ly(ラジ リ-)の「ミゼラブル」。てっきりまたスランス人好みの歴史ものの大作かよと思ったが全然違った。
 現在フランスで大社会問題になっている移民や貧困家庭の子供たち悲惨な現状、無情レミゼラブルな郊外を記録映画の手法で描いた社会派映画の力作だと話題だ。



 もう一本は新人女性監督Céline Sciamma(セリ-ㇴ シアムマ)の「portrait de la jeune fille en feu「(恋焦がれる若い女性の肖像)」。
 18世紀のブルタ-ニュ地方にある孤島を舞台に美しい女性画家官能話が官能的な絵のモデルに魅了されていく。画家とモデルの肉体関係は同監督とモデル役の主演女優の間にあった実話だとか。上映終了後は満員の客席のスタンディングオ-バ-が10分前後も鳴りやまない光景をTVが中継し続けていたので驚いた。いい映画だったのに違いない。
 モデル役はAdéle Haenel(アデル ハエネル)。最近文字通りメキメキと人気上昇中で、この他にも同映画祭で2本の主演映画が出品されている。主演女優賞の有力候補だろ。
 だがベテランの名女優イザベル ユぺ-ル主演の作品も出ているので予断は許せない。。



 大物ではクロ-ド ルル-シュ監督が53年ぶりにアㇴクエ-メとトランティニアンの同じ組み合わせで撮った「男と女」。同監督は両俳優の皺を撮りたかったといってるそうだが、シナリオは大分違っていそう。
 上映後の記者会見も盛り上がっていた。アㇴクエ-メは感想を聞かれてあのパレの階段を登るのがしんどかったと、会場を笑わせていた。


 またアラン ドロンにカンヌパルムド-ル名誉賞が与えられたが、そのスピ‐チは本人も時々涙で声を詰まらせて感動的なものだった。
 もう80歳を超えているのに足取はしっかりしていた。
 印象的だったのは、私の一分は皆さんの一日に価すると言ったことだった。恋人だったミレイユ ダルクの名前を出す時、声を詰まらせていた。一番愛した女性だったのではないかという気がした。、


 米国の巨匠テレンス ヤングがドイツで制作したune vie chée(隠された人生) ナチスの協力圧力に屈しなかったオ-ストリアの農夫を描いているが、高い前評判だ。
 更にシャルロット ゲンスブルグとベアトリス ダルと、個性派女優が共演。
 コンペ対象の作品だが、上映は真夜中という異例の扱いだった鬼才ガスパ‐ノエの新作も反響を呼んだ。
 これ以降の強力な作品は異端児タランティーノが栄光う時代のハリウッドを描いた作品、続いてスペインの大監督ペドロ アルムドバ-のDouleur et Gloire(苦しみと栄光):
 フランス中堅監督の俊英アルノルド デプレシャンなどの作品が上映されていく。
 こう見てくると、どの作品がパルムド-ルを獲得するかは混沌としてくるが、それでも予想を立ててみると。
 パルムド-ルはペドロ アルムドバ-。既に8回出場して、9回目の今回の作品も前評判上々、年齢的にも69歳になることなども考えての事。
 監督賞はタランティーノ。審査委員賞はテレンス ヤング、新人賞はレミゼラブル、
フランスの新進女性監督は批評家賞。でもデプレシャンも何か賞をとる予感が。
 カンヌ映画祭も受賞予想の賭博があると面白いのにな。
 結果は見てのお楽しみ。