獅子頭伸のフランス情報;パリのつびぶやき。

在仏約40年の経験を生かしてパリを中心とした文化社会情報をお伝えしていきます。k

パリに暮らして40年以上が経ちました。情報誌パリ特派員、日本映画祭のプログラムディレクタ-などをしてきました。恐らくパリに骨を埋めるでしょう。日本映画紹介の仕事は続けています。年齢は還暦過ぎてから忘れています。そんな日本人男が触れる日常や特にカルチャ-シ-ン、またパリから見た日本の事などを書いていきたいと思っています。ヨロシク。

パリの希望








今、フランス人の心には悲観と終末感が漂っていると思う。


 コロナ禍は完全に終わっていないし。
ロシア独裁者プ-チンの仕掛けた侵略戦争は一年超も続いているだけでなくウクライナの抵抗で悪化し深刻化。第三次世界大戦を危惧する声もある。


 それでも依然ロシアは凶悪犯の罪人やシベリアなど貧困の遠地方から集めた男どもを兵士にして武器の代わりに肉弾として戦わせ一日1000人の戦死者出しながら戦闘を続けている。


 一方フランス経済は予測程破局的ではないもののインフレによる物価高は物凄く、一週間の食品買い溜め費は平均50ユ-ロから100ユ-ロ位の2倍に値上がっている。


 またマクロン政権は年金受給の定年を60歳から64歳に引き上げる政策を発表したが、全労組が手を組んだ200万人以上の大反対のデモとゼネストが起こりデモは今も断続的に続き、出口不明のまま社会は動揺している。


 更にスパイ気球撃墜事件で米中軍事衝突を心配する声もあるし、イスラエルとパレスチナの間での血で血を洗うテロ戦争も再燃している


 戦争の準備を完了したという北朝鮮と国内で女性抑圧しを核開発を続行するイランはロシアへの武器密輸をしている。
 それにイランが核弾頭持ち核武装国の宿敵イスラエルと軍事対立する事にでもなれば人類はリアルに滅亡の背戸際に立たされる。


 全てフランスに直桔する影響がある事件ばかりで悲観主義が蔓延するのは当然だ。


 有名なフランス人社会学者エマニュエル・トッドは日本のインタビューに答えて「民主主義は滅びるしかない」と民主主義を追い詰めるような発言している。 一時は好きな学者だったが最近はこいつは信用してない。まったく共鳴出来ない。


 シリアとトルコでは大地震が発生した。テレビの現地中継を見ていると否応なく終末感を抱く。神は人類を見放す。死者は結果的に現在の3万3千人の2万人の2倍になるだろうといわれている。


 こうした暗黒の時代が背景なのか 。
 20歳前後の若い女性が強姦され殺害される事件が続いて起こっている。
 またパリ郊外の住宅を娼婦の館とした新手の売春ビジネスが増殖。娼婦は南米女性が殆ど。
 セックスではポルノも繁栄。フランスの代表的なAVサイトyou pornoの年間アクセス数はは2千万人以上だ。政府は今年から未成年18歳以下はポルノサイトへのアクセを禁止する。







 約10年前から近くの特にスクリ-ンが抜群の映画館で平均月一回日本映画を解説付きで上映するシネクラブをやっている。
 最近では2月5日に日本映画クラッシクの名作「黒沢明監督の赤ひげ」をプレゼンテーションした。
 これは山本周五郎の小説が原作。
 18世紀中葉、幕末から明治維新へと流れていく歴史の大変換期を背景に実在した小石川療養所を舞台にして赤ひげ医師と長崎留学帰りのエリ-ト青年医師、それに「貧しき人々」との間で人間として美しい交流を描いたもの。
 隙のない時代考証、真の日本美を的確に捉える秀逸な場面、芸術であると同時に娯楽の楽しさ、息を呑む圧倒的な画面描写。3時間の長さを一瞬も飽きさせない鋭利な演出。
 「終わり」マ-クが出るとブラボ-の喝采が沸き起こった。一般映画館では珍しい事だ。


 終演後、劇場内バーで討論会をやったが、観客は熱っぽく感動は冷めず、悲観や終末感を忘れ勇気と希望を得た様子だった。
 改めてカルチャ-=映画の力を痛感。
 日本人として誇りをもった。