獅子頭伸のフランス情報;パリのつびぶやき。

在仏約40年の経験を生かしてパリを中心とした文化社会情報をお伝えしていきます。k

パリに暮らして40年以上が経ちました。情報誌パリ特派員、日本映画祭のプログラムディレクタ-などをしてきました。恐らくパリに骨を埋めるでしょう。日本映画紹介の仕事は続けています。年齢は還暦過ぎてから忘れています。そんな日本人男が触れる日常や特にカルチャ-シ-ン、またパリから見た日本の事などを書いていきたいと思っています。ヨロシク。

パリからみたプ-チンの軍事侵略。タクシ-より銃弾を。

   




 テレビを点けたらロシア軍が空軍と戦車の大部隊を出動させて隣国ウクライナを侵略している映像が出て来たので仰天した。
 かなり前から米大統領バイデンがプーチンは大規模な進軍を準備していると警告していて、仏大統領マクロンも話し合いで戦争になるのを防止しようと奔走していたのだが、フランス人の大半はこの21世紀のヨ-ロッパでいくらなんでも国際条約を踏みにじる軍隊による独立国家への侵略などありえないと楽観していた。
 プーチンの侵略は第二次世界大戦の引き金となった㎜年のヒットラーによるポーランド侵略の歴史を思い出させたが、反ソ連デモを戦車で圧殺したチェコ事変と比較する識者もいた。
 テレビで見るロシア軍の首都キエフに対するミサイル、戦闘機、戦車による攻撃は展開が早く効果的な猛攻で,この侵略がかなり前から綿密に練られていたことは確かだ。緒戦2日だけの攻撃だけで首都キエフと軍防衛組織のインフラの大半が破壊されたといわれている。
 プーチンの戦略は民主主義の投票で選ばれたウクライナ政権を軍事力で潰し親露の傀儡政権を樹立する事にあったようだが、現在5日たってもウクライナの抵抗は頑強に持ち堪えていてそれは失敗した。


 有名な人気写真週刊誌パリマッチ最新号の表紙はウクライナ女性兵士の写真である。
  
 民主主義選挙で選ばれたウクライナ大統領ゼランスキ‐は日本でいえば漫談の人気者でいわば河原乞食の出。プ-チンは軽蔑して歯牙にもかけなかったようだが、怯えて逃げることなく新世代らしくソシアルメディアを使って軍人のシャツ姿で国民を挙げての抵抗を呼びかけ続けている
 米大統領バイデンが米国への亡命を薦めた時、「今必要なのは銃弾でタクシ-ではありません」と答えている。
 その勇気は戦時の指導者として勇敢で立派とフランスだけでなく欧州各国で大称賛、尊敬を集めている。


 パリからキエフ迄のフライトタイムは僅か2時間超、フランスにウクライナ人は多くフランス人はほぼ同じヨ-ロッパ人と感じる親しみを持っている。パリのリパブリック広場では日々プーチン弾劾のデモ集会が行われている。恋人がウクライナ人というパリ在の日本人も知っている。


 これだけ戦争を身近に肌で感じた事はなく、戦争は恐ろしいものだと実感している。。プーチンは核兵器使用の可能性に3回も言及している。


 キエフの人口は約300万人。約100万丁の自動小銃が市民に支給されているだけでなく、ボランティアが沢山の火炎瓶を作っている。ロシア侵略軍の中心は10代の兵士だという。
 ファッションモデルには金髪で白い肌にブル-アイの若いウクライナ人女性が多いと思うが、ロシア軍に抵抗する戦闘員として志願する女性も多いと聞く。
 仏大統領マクロン氏は今回のロシア侵略事件はヨ-ロッパの状況を深く大きく変ると言っており、既に軍事予算を増やしフランス軍に協力を求めている。
 更にドイツがウクライナ支援として300弾のミサイル武器の給与に踏み切った事も1945年戦後初めてで革命的と注目されている。
 プ-チンや取り巻きの個人財産をタ-ゲットにした厳しい経済制裁、先進国での反プ-チンデモの波などプ-チンはは完全に孤立している。
 今日欧州議会はウクライナのゼランスキ‐大統領が何時もの軍用シャツに無精髭姿のビデオ中継で最後まで戦うと演説し大拍手で迎えられ、議会はウクライナ支援を満場一致で可決。その模様をテレビ同時中継で見ていて感動してしまった。
 インフレによる物価高、コロナ禍の流行、ウルトラ極右の登場、社会暴力の増大、そしてこの戦争と、フランス人は時代と国がどこに流れていくのか不安をいだいて生活している。

老いた美人パリジャンヌへの一目惚れ。

 
 老いて一人でいる時が多いと寂しくなるので市の施設が地元の高齢者を対象にオーガナイズしていて近所にあるフランス人の読書交換会に登録した。参加者は読んで面白く推薦したい本を持ち寄って、それについて話し合うというものだ。
 驚くことに男は日本人の僕だけ。他はみんな高齢者のフランス女性ばかりである。


 もう二回参加した。個人的には若く綺麗な女性が好きで婆さんには興味はないので、その点で初回はいささか失望したが読書の程度は想像した以上に高かったので期待は満たされた。
 ところが2回目出席にして未だ名前も知らない知的な初老女性と本の嗜好がマッチする事が分かった。
 それで親しみを覚えて少し立ち話した時、彼女のブル-の瞳と品性のある細面顔の綺麗さに一目惚れしてしまった。
 若い頃はかなり美しい女性だったに違いない。高齢者という色眼鏡でみないと、初老になった今もすごく魅力があるのである。


 人生は不思議だ。この年になって、この女性に一目惚れしてしまったのであるから。しかも若い女性にしか興味がなかったのにである。


 その夜は、彼女と一緒にパリの公園を散歩したり、綺麗なレストランで食事したり,文学についての会話楽しむとか、熱い夢想に囚われた。その甘い苦悶は10代の頃の初恋の味に似ていた。


 人生は何時何が起こるか分からない。こんなところにこんな年齢になって好きなタイプの女性が偶然に登場するとは。


 二回目の読書会で、趣味は合うにしても初老のフランス女性と短い会話をして目があっただけで、片思いの一目惚れ恋心が生まれるなんて思ってもみなかった。


 彼女にはかなりの本を読んでいて教養があり選択本の趣味も合うから気を惹かれるのは当然といえば当然といえるが、究極的には出会いは神秘としか言いようがない。


 つき合いたいと思う。今は彼女は夫が他界している未亡人であってほしいと思っている。


 一つ確かに言えることがある。それは短い立ち話した時、僕は彼女に若かった頃の美しさを初老の美の中に見たl事だ。


 それだけではない。彼女の品性と教養、それにフランス人には珍しい謙虚さが美しさを作っている。


 人生は不思議だ。


 女学生の頃、この人は僕など足元にも及ばない素敵なパリジャンㇴだったに違いない。と思わせる雰囲気が尚ある。あの老いても綺麗なブル-の瞳。ショックだった。


 彼女は二冊の面白そうな本を貸してくれた。つながりが出来た喜びがあった。


 出来るなら残りの人生、彼女とつき合いたと思う。それは未亡人でなければ不可能だと思うから、そうあって欲しいと思い願っている。

 素晴らしい出会いとはそうあるものではないが、生きているか死んでいるのかも完全未知数の彼女の夫へのジェラシ-が既に発芽している事に驚く。

フランス新年と幸せ。





 



新年、自分には不幸せな事がみあたらないというような46歳の人気女性作家のインタビュー発言をネットでちらりと読んで、ひっくり返るほどびっくりした。
 何時もなんらかの不幸せに襲われていると感じている身としては、この穢土といわれる世の中にそんな小説家がいるとは思ってみたことがなかったから。


 しあわせとふしあわせは相対的で、比較によって生まれるものだと思って来たからこの区別は必ずあると信じてきた。それがそういう人間の感情を全て取っ払ったところで「私には不幸がない」という事は信じがたく、ただすごいと思う。


 この女性作家の場合、他者の悲劇に対する想像力はどう働いているのだろうか 。
 いやそもそも他者の人生、内面に対して深入りする関心はなく事実、行動のみにしか興味がないのかもしれない。目に見える物理的な事しか信じられないのかもしれない。
 こうした楽天的な日本文学に比べればフランスは悲観的な個人の内面のディテ-ルを追及するペシミズムの文学作品が多いと思う。日仏文化の差は以前より格段に開いているように思える。


 新年を迎えて、今大きな社会現象はコロナ-19の新変種「ミクロン」の大流行と3ケ月後に迫った大統領選挙が激しさを増している事である。


 ミクロンは24時間で35万人の感染者が出ていて病症は軽いといわれているが、それでも日々の感染者数が大きい事と感染者に青年、壮年者が増えている事が大問題になっている。          


 予防の為にワクチンを打つべきだと政府は懸命に情宣しているが、ワクチンを打つかどうかは個人の自由と認めるべきと反対する人が数百万人いるのでフランスを二分する程の騒ぎになっていて、ワクチン接種反対派に無責任と怒った大統領がワクチンしてない人は許す事の出来ない最悪連中だと発言、これも物義をかもしている。


 大統領選の方は極極右翼のデマゴ-グが出馬して選挙戦をかき回していて、しかも候補数も多く混戦状態。ただフランスの大統領選は対立が厳しく争いが過激なので格闘試合を観戦しているような面白さがある。
 しかし今のところ最有力候補マクロン現大統領は揺るがないでいる。


 2022年のフランスは景気は上向いているそうで、オリンピックがまじかでもあり、ベルエポックのような消費の華やかな時期があるかもしれないと予感する。
 ダイナミックに動くフランス社会は面白い。

実際どんな年になるのか。それは神のみぞ知る。自分の運命も分からない。