獅子頭伸のフランス情報;パリのつびぶやき。

在仏約40年の経験を生かしてパリを中心とした文化社会情報をお伝えしていきます。k

パリに暮らして40年以上が経ちました。情報誌パリ特派員、日本映画祭のプログラムディレクタ-などをしてきました。恐らくパリに骨を埋めるでしょう。日本映画紹介の仕事は続けています。年齢は還暦過ぎてから忘れています。そんな日本人男が触れる日常や特にカルチャ-シ-ン、またパリから見た日本の事などを書いていきたいと思っています。ヨロシク。

暴力と日没に帯びる緑色の光線。

 



親が給食費を払えない貧乏なので学校で給食を食べれない子供たちがいる。
今のフランスは政治家始め大人が自分自分優先を主張、貧しい子供たちに屈辱の苦しみを与えている。耐えがたい。マルチニック島出身で元法相の人気黒人女性政治家トリビア氏が激怒した。パリの貧富の差は大きい。共鳴する人は多い。


 久しぶりに素晴らしい以上にすごい舞台を見た。
 場所は広々として緑豊かなパリ国際学生会館cite international内にある劇場。
リセアン高校生の観客が一杯来ていた。多分授業の一環だろう。
 タイトルは「Toropiaue de la violence:暴力の熱帯地方」。


 冒頭は紗幕に映画が映る。地中海を命がけでゴムボ-ト航海する黒人難民達。中に美貌の黒人の妊婦がいて、航海中に赤ん坊を出産し白人女性に託して死ぬ。白人女性を母として育ちハイティ-ンとなった子供は殺人罪で投獄される。
 話は仏領マヨ-ル島で麻薬ディ-ラのギャングが君臨する無法地帯を中心に、パリの移民街の麻薬密売やイスラエルで抑圧されるパレスチナ人たちの悲惨さを絡めながら展開していく。
 映画と演劇の巧みな組み合わせ。舞台美術の見事な視覚効果。黒人若手男性俳優の迫力と身体の美。時折登場する白人女性歌手の郷愁の歌もいい。
 舞台で実際に雨が降ったり水溜まりでの血闘もある。
 舞台展開に使われる日本女性のドラム演奏もすごくよかった。


 満員の観客は総立ちでブラボ-。鋭利な同時代演劇だ。原作はNathacha Appadで、演出は注目株の新進Ajexandre Zeff。


 自宅隣の劇場が招待してくれたので、仏新進作曲家Joce Miennielの創作オーケストラ楽曲「日没に帯びる緑色の光線」の演奏会を聞きに行った。さほど有名作曲家でもなさそうなので期待度は低かったが、これが素晴らしかった。


 ピアノ、バイオリン、フル-ト、ハ-プ、禅の鉢の様なものや中華ゴングなど多彩な打楽器を使った打楽器奏者の独創性、他にも名前を知らない楽器などで構成された小粒なオ-ケストラだったが、それらの音の組み合わせの配合が繊細で、かつ適格。
 冒頭はドビッシ-を感じさせたが進むに従って作曲家の独自の音楽宇宙に引き込まれていく。
 曲に没入して聞いていたらステ-ジも観客席も消えて、日没時に稀に水平線稀で輝く緑色の光線をモチ-フした音楽宇宙の中にだけにいるという感覚に陥った。
 最後の盛り上がりが余りにも感動的だったので、不覚にも泣いてしまった。


 こう いう余り知られざる新進作曲家が隣の劇場で披露するなんてすごいとしか言えない。


 次に聞きにいった若くてチャ-ミングなブラジルのジャズシンガ-のライブにも心が 震えた。
 ステ-ジにはピアノ奏者とシンプルで黒色系の服姿の彼女がいるだけ。楽譜の上を綱渡りしているような繊細な歌い方で、声そのものに既にすごい魅力がある。選曲もピアニストと舞台上で直接話して静かに決めていた。




 会場は有名なアラブ系移民街バルベスにある「360  music paris factorie」。
 シンプルなジャズクラブだが面白い場所に出来たものだ。


 彼女の名前はAgathe 。注目して欲しい。
 コンサ-ト後、簡単なアラブ料理の食事をしながら話したが、すごく知的でチャ-ミング:な女性だった。


 目下パリでは凱旋門を梱包した米のクリストの作品が悠然とエトワ-ル広場に存在しているが、この圧倒的なすばらしさについては改めて触れたい。
 パリはまさに芸術の世界首都である。


 だが、この文化豊かな都会に学校給食から排除された子どもたちもいるのだ。胸が痛む。