大統領選討論会やフランス映画史を描いた傑作映画など。
パリ日本文化会館で、最近では滅多に見られないラジカルなダンス公演「Loss Layers」(コンセプト: Fabrice Planquette コレグラフ、ダンス: Yum Keiko Tatayama )があった。
薄暗い舞台の中央にスッポットライトが射していて白包帯の不思議な物体を照らし出している。一時注目をされたジョ-ジ シガ-ルの人体彫刻の様でもある。しかし、目が慣れてくると、それはダンサ-が膝を抱えてうずくまっているのだと分かる。
暗黒舞踏のような動きで徐々に起き上がってくる。線状の鋭い光が幾重にも空間を幾何学的に仕切る。音楽は金属音を効果的に織り込んだ実験的な現代音楽のようなもの。
光線の角度とダンサ-の動きで多彩なイメ-ジが繰り広げられる。激しい音楽の速度にもよくマッチしている。ダンサ-の身体とか顔は殆ど闇に沈み見えず、
ダンス公演というよりも光線と音楽と人体による動く造形美術展をみているような印象。となるとキャンバスは薄暗い闇となるのか。
アバンギャルドは死滅したと考えていたのは間違いだった。アバンギャルドは何時の時代にも少数派で生き残っているものかもしれない、と思った。
カルチャ-シ-ンの他のネタといえば、マルティン スコ-セスの映画「沈黙」と黒沢清の「くらい部屋の秘密」と日米と日仏の合作映画が共に興行的には大コケ、異文化の合作は難しい。成功例は殆ど無い。それに比べて米映画の「ラ ラ ランド」と「美女と野獣」が大ヒットしている事など。
しかし、一番面白かったには4月4日の中継された大統領選の候補者による討論会。有力候補者だけでなくいわゆる泡沫扱いに候補も含めて全員が参加。その数14人。討論時間は4時間。これだけの規模の政治討論会はフランス史上初めてという事で盛り上がった。
格闘技の始まりのような雰囲気。会場入りする候補者の紹介の仕方も、デスマッチ風、その興奮ぶりを見ているだけでもワクワクさせられた。権力争いは生死にかかわる問題であるという事を改めて認識させるバトルだった。
第一回投票は4月23日で極右のペンが首位になる可能性大と言われているが、その他の候補者は第二回投票で全員反ペンで結束するとみられていて極右政権が誕生する可能性は低い。
舞台作品ではシナリオがあり、そこから外れる事はないが、これはそれぞれが入念の準備して臨んだハイレベル、それも自分の生死をかけた即興劇でもある。
中にはトロッキストの女性候補もいて議論をかき回していて面白かった。
今夕、カフェとレストランとライブステ-ジ、それに映画館があるアントレポで素晴らしい映画を見た。
ベルトラン タバニエ-ル監督のフランス映画史のドキュメンタリ-「フランス映画を横断する旅」。ベッケルから始まってルノワ-ル、ゴダ‐ルの傑作への鋭い批評もさることながら音楽についての言及、引用フィルムのすばらしさ。
やはり一流監督は生半可な映画知識でやってないなと圧倒された。スゲエ。
パリの春は過ぎていく。間もなくカンヌ映画祭である。完 獅子頭伸
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