獅子頭伸のフランス情報;パリのつびぶやき。

在仏約40年の経験を生かしてパリを中心とした文化社会情報をお伝えしていきます。k

パリに暮らして40年以上が経ちました。情報誌パリ特派員、日本映画祭のプログラムディレクタ-などをしてきました。恐らくパリに骨を埋めるでしょう。日本映画紹介の仕事は続けています。年齢は還暦過ぎてから忘れています。そんな日本人男が触れる日常や特にカルチャ-シ-ン、またパリから見た日本の事などを書いていきたいと思っています。ヨロシク。

アラブ的という事と、小池百合子の権力闘争。

 渦中の政治家、小池百合子の権力闘争のやり方をみていると、アラブ的だなと感じる事が多い。



 エジプトのカイロ大学で学び卒業しているから、そういう経歴に影響されて考えるという面もある。が、それだけではない個人的体験がある。



 彼女の名前を始めて聞いたのは、カイロ国際映画祭の一部門として日本映画祭を仕込むために滞在した時である。


 


 積極的に協力してくれたカイロ大学日本学科教授、確かサムザ氏といったと思うが、彼と親しくなり小池百合子という期待できる国際的な日本人政治家がいる事を教えてもらったのである。


 


 アラビア語は現地人と変わらない程流暢。日本人には発音が絶望的に難しい言葉である。
 両親がカイロで日本料理店を経営している事。日本とエジプトの親善関係を強めていく事に熱意がある事。同級生で親友であった事。そんな話をしてくれた。



 カイロ大学構内に行ってみた。教育内容は欧米の大学と同じという事だが、ミニスカ-トや肌を露呈する服を着ている女子学生は皆無。大多数はフラ-で髪を隠しパンタロン姿であった。



 時期は独裁者ムバラック政権が身内利益の政治(安部政権と酷似)で腐敗し切り、腐肉がボロボロ剥げ落ちていくような末期症状だった。


 某高官に「おカネがあれば今ならムバラック大統領を買えますよ」と冗談交じりに言われた事が忘れられない。それほど頭から腐り切っていた。
 政権内部で生死の権力闘争が行われているのではないか、という事も接触した文化省の役人の挙動で充分感じられた。戦々恐々でナーバスだった。
 今考えてればまさに独裁政権崩壊前夜だったのだ。



 その醜さを隠すためだろう。カイロ国際映画祭はカネに糸目をつけない大豪華さで、オ-プニングにはハリウッドの有名スタ-がずらりと舞台にならび挨拶した。
 だが、肝心の運営は杜撰で映画が逆さまに上映されていたという話も聞いた。



 巨額詐欺未遂事件の罠のかけられ最終公判直前に重度うつ病で倒れた後だったから独裁政権の内ゲバをより精細に観察できる体力がなく、千歳一遇の機会をのがしたと今も悔やまれるが。



 生涯唯一無二の友人はアルジェリア系フランス人である。困ったときには何も言わず助けてくれる。
 
 先日銀行トラブルがあった時もすぐに都合をつけて1000ユ-ロを用立ててくれた。 返済日も言わず、こういった。「トラブルを解決して、残りのカネは好きに使ってくれていい」。
 アラブ文化には仏教と同じく喜捨、お布施の精神がある。西洋から見れば極東との間に位置し、同じアジア人と分類される。
 アラブ人は侵略し植民地化し祖国をずたずたにした西欧諸国を決して許しはいない。
 気高い誇りをもっている。一夫多妻制は人間にとて合理的なものと考えている。友諠に厚い。
 だが敵にたいしては容赦なく凄まじく非情。二枚下どころではない。何枚もの舌を使い分ける。裏切りの概念が違う。


 イスラエルの諜報機関との熾烈な戦いを見れば分かる。
 策略、謀略は洗練され巧みである。


 こうした社会で有力政治家として生き残っていくには相当の精神タフさと緻密な策略画が必要だ。


 男尊女卑で女には教育はいらないという風潮が支配し、権力闘争が熾烈極まりなく暗殺は稀でない。だから若い女が生活し大学まで卒業するというのは相当な事である。


 有力政治家のバカ息子が高学歴にさらに箔をつけるために米国の大学に留学し免状を手にしてくるのとは訳が違う。特に米国ではカネで大卒の免状を貰えるとも聞いた。
 フランス大学卒の肩書がないのは、そうした事情があるかもしれない。


 だいたい日本の大学での英語力くらいで英米の一流大学の講義についていける筈がない。それは約40年フランス語と格闘しけている人間が保証する。言葉とはそんなに甘いものではない。


 娘がグランドエコ-ルで勉強しているが、その鍛え方はすごいものだ。ついて来れなければどんどん切り捨てる。


 小池百合子に多くの政治家が対処できずうろたえているのは、発想の根源にアラブ的なものがあって、虚を突かれている面があるように思える。
 世界史もアラブ圏から見れば欧米とは全く解釈が違う。
 例えば十字軍は野蛮な侵略軍である。


 アラブの風呂屋でマッサ-ジをして貰うとプロレスの技で体がバラバラにされるように感じる。日本の按摩さんのマイルドさからはあまりにも違う。


 小池百合子は馴染みのない異文化人が旧来の秩序、日本人政治家のパタ-ンを搔き乱している存在のように見える。


 その文化的側面は深い考察に値する。興味ある現象と思える。完