美と奈落のパリ。
パリは感動する出来事に遭遇する事が多い。
どうしてなのかな。
人間のドラマが露呈しやすい文化だからなのか。
そもそもドラマティックな都会だからなのか。
自宅の最寄り駅「marakkof plteux de vinves 」の連絡通路の真ん中あたり。
ダンボ-ルを敷き壁を背中にして何時も座っていた初老のホ-ㇺレス女を見ないなと思っていたら-。
数日後、女の居場所に深紅や黄色のバラなど数本の花束が添えられいた。
背にしていた壁には、その女性の写真と手紙が貼ってある。
「22年間、ここに居続けたモニカが心臓麻痺で急死しました。冥福を祈りたいと思います」
モニカという平凡な名前があったんだ。
しかも、「22年間もいた」。
彼女は人間だったんだよ、と急に言われたようで虚を突かれた気持ちがした。
張り紙は誰がしたのか。
名前を知っていて写真も撮っているのだから親しかったに違いない。
時々、黙々と煙草を吸っていた。
何かしゃべってるのは見かけなかった。
ただ座っているだけ。飼主に置きざれにされた犬のような哀れな目線をしていた。
モニカにとって22年という時間=人生はなんだったのだろうか。
この事件があった後、有名全国紙「liberation」を買ったら、一面3ペ―ジでホ-ㇺレスのルポ記事を掲載そていたので驚いた。
それだけ社会現象化しているという事だろうが、街路だけでなく社会福祉保護施設でも
女性ホ-ㇺレスは同じ仲間に強姦されるとあった。悲惨だ。
オペラ座でのダンス公演「programme Theshigawara/Balanchine/ Bauch」(10/10-16/11.Operadepadeparis.fr)を見た。
平土間観客席(高額席)は贅沢で華やかだった。
満員でブルジョワとエリ-トの匂いがした。
最前列から2列目の招待席だった。
周囲は紳士淑女ばかり。高級そうな服装や外套。
高価な宝石のネックレスが光に煌めく。いい香りの香水。
仕立てのいい服装をした令嬢らしい女の子などなど、
パリ上流社交界の人々である。
こっちは貧乏だが特に引け目は感じない。着ている中国ジャケットが実は移民街で買って僅か14ユ-ロしかしないと知ったら、どういう顔をされたかは不明だが。
服に商品札がついているわけではない。それにセンスでは高級服に身を包んだ輩よりも上だという自信がある。
着飾ってはいるけど実は台所が火の車という連中もいるに違いない。見かけだけでは分からない。
カンヌ国際映画祭などでは、タキシ-ド姿で派手に振舞っているがホテル代を踏み倒す連中がいるし、ロ-ルスロイスを乗り回している映画プロデュ-サの自宅は裸電球一つという例もある。
一作目はlincoln kirstein振付「un ballet"ibm"」。
いや-完璧な美しだ。
男女6名で12名のバレリ-ナが交互にデュエットで踊る。手と脚は細くて長く、スラリと細く繊細。精緻な硝子細工みたいである。
いくら体が西欧的になったといわれても、日本のバレリ-ナにはこの感じは出せない。無理、無理。身体の民族性が違う。
訓練でどうにかなるという線を越えてしまっている。天の賜物というしかない。
洗練され優雅な別れと抱擁の動き。一切に雑さがない。高密度。高技術。
指先の微細な動きも正確に決める。陶酔した。
舞台は背景に真っ青なスクリ-ンがあるのみ。白と黒でシンプルな白と黒のダンス着。 ミミニマルア-トだ。都会的なセンスも魅力。優雅な美にただひたすら息を呑む。
2番手は日本の勅使川原三郎が今公演用に創作した新作。
前作の流麗さとはうって変わって、難しそうな動きで構成。饒舌に対してドモリと言う感じ。でもさすがは世界一流のオペラ座ダンサ-だ。
難解な振付を見事にこなしていた。しかし、全体に頭でっかちのバレ-作品という印象を受け、すごいなという気はしたが、音楽も重く暗いもので、親しみを抱き大好きになるようなものではなかった。でも、同氏は世界第一線にある一流振付家として認知去れた事になる。
最後3番手はピナ バウシュの遺作、ストビランスキ-作曲音楽「春の祭典」。
信じられないすばらしいバレ-作品だった。
初めから最後まで感動のしっ放し。すごい。
ソロダンスと祭典の群舞の組みあせ。もう言葉にならない。
ピナは神なのだと思いましたね。バレ-と音楽に全く隙がない。ピッタリ。「春の祭典」はこの為に作曲されたとしか思えなかった。
舞台奥から蟹股みたいな動きで群舞が徐々に前に進んでくる場面の圧倒的な面白さ。
それは真の天才だけに許される独創性だ。
ラストシ-ンではオペラ座女性エトワ-ルの一人「 EMILLIE COZELLE」 (1993年、ダンススク-ル入学)が激しくソロで延々と踊り続ける。
圧倒的なド迫力で感動し昇天した。鳥肌がたちっぱなしだった。
すごい、すごい、すごい。感動。至上の美の世界である。
この舞台を見られて、ホントに長生きしていてよかったと思った。
オペラ座周辺の夜景がおとぎ話のように見えた。
全てが美しかった。
パリは美しい。
後日、ビストロ「静かなお父さん」でカフェ一杯の後、外の出ると僅か数メ-トル先の街角で、盲目の黒人青年が白い盲人用の杖を片手に歌を唄っていた。すごい歌唱力である。
これってルイ チャ-ルズじゃないかと思った。
人だかりはあっという間に膨らんでいく。誰も立ち去ろうとしない。感動で離れなくなっている。群衆が粗末な箱にどんどんカネを投げ込んでいく。10ユ-ロ札も見えた。
選曲もいい。そして自然発生した夜の野外コンサ-ト会場と化したのである。
日本のマスコミで名を売っただけの芸能人や歌手に無名前提で、これだけの場を作り出せる実力者がどれだけいるだろうか。芸能の原点を見せられた思いがした。
感動して気がつくと寒風吹く中、2時間も立ちっ放しで聞き続けていた。
最後に彼はリビアでの黒人奴隷売買に言及してスティ-ビン ワンダ-の「ハッピ‐デイズ」を心こめて歌う。観衆は合唱した。自然に涙が出た。
ps。
先日、マクロン大統領は在任中の重要課題として、レイプ、セクハラに対する政策を宣言した。
告訴の簡素化、泥酔でも明確な合意がない場合はレイプ認定、15歳以下はどんな場合でも合意の性交は認めない。などなど。
それを受けて女性の告発、証言が増えているが、驚くのはフランスって父親が娘を犯し続けるっていうのが多いんですよね。日本でも隠れているだけで、多いとは思うけど。
シャンゼリゼ大通り界隈で、18歳くらいの可愛い黒人少女娼婦に声をかけられた。
一発150ユ-ロ、フェラだけだったら65ユ-ロ、自宅訪問なら200ユ-ロだとか。
寒風の夜の黒い娼婦マリア。こんな純情そうな少女が金持ち爺に買われるのかと思うとやるせなく怒りがこみ上げる。
尤も自分も懐が暖かったら、買っていた可能性大だ。
淋しそうな微笑はとても綺麗で、素敵な体をした黒の天使だった。完
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