獅子頭伸のフランス情報;パリのつびぶやき。

在仏約40年の経験を生かしてパリを中心とした文化社会情報をお伝えしていきます。k

パリに暮らして40年以上が経ちました。情報誌パリ特派員、日本映画祭のプログラムディレクタ-などをしてきました。恐らくパリに骨を埋めるでしょう。日本映画紹介の仕事は続けています。年齢は還暦過ぎてから忘れています。そんな日本人男が触れる日常や特にカルチャ-シ-ン、またパリから見た日本の事などを書いていきたいと思っています。ヨロシク。

狂人と思われてパリ精神病院閉鎖病棟に強制入院させられる。

ネットで見ると今日本では不倫醜聞が続発しているようなので、日仏の不倫に関して今日書くつもりでいた。
しかしパリで異文化摩擦からくる精神病の治療と研究を続ける大尊敬の精神科医O先生から恐ろしい話を先刻聞いたので、まずはそれについて書きたい。


パリに来たばかりでフランス語も殆ど出来ない日本の男性26歳が、突然大家からクレ-ㇺをつけられた。
アパ-ト入り口の広い踊り場に装飾として並べて置かれてある植物の植木鉢がよく転倒させられているので、犯人は何故かその青年だろうと疑われたらしい。
青年にしてみれば完全な濡れ衣で反論し口論となった。
ところが彼はフランス語ができないから話が通じない。
大家には管理上の間違いがあったらしいがフランス人が絶対自分の間違いは認める筈がない。
そうやって口論で揉めている内、青年もエキサイトする。しかし何を怒鳴ってるのかは分からない。業を煮やしたのか怖くなったのか、大家は警官を呼んだ。
警官にも日本青年のフランス語は通じず全く言い分が分からない。興奮している事だけが分かるだけだ。
それで警官はなんと暑に連行してしまった。
そして、その次が恐ろしいのだが、警官が勝手に狂人と決めつけ精神病院に送り込んでしまったのである。
病院でもフランス語らしい言葉で何か喚いているが、誰も理解できない。
遂に精神病院の閉鎖病棟に閉じ込められてしまった。
幸い週の内、携帯で外部と連絡を出来る時があり、O先生が助けを求められて診察に赴き、正常人で狂人ではない事が証明され退院できたという。
それでも5日間も強制入院されていたそうだ。


仮にO先生がパリにいなかったら、言葉で何も説明できず、長い間、閉鎖病棟で喚く事しかできなかったら。そういう狂人ばかりがいるのが閉鎖病棟である。
人の運は紙一重というが青年は狂人としてパリの精神病院閉鎖病棟で生涯を終わっていたかもしれない。


僕もこの夏、銀行と取っ組み合いの喧嘩をした。窓口によって皆いう事が違う。
自己判断でいい加減な事をいうから。こっちは振り回される。
そもそも客とは対等な関係という意識がある。だから余計が立つ。あんたは主人ではなく俺は客だと怒鳴り返してやった。
西部劇のように腰の拳銃で撃ち殺したやったらさぞかし気持ちがすっきりするだろうと、何度思った事か。
フランス人を従わせるには法的強制力か権力の発動しかない。


現在のフランスはフランス革命とナポレオンによって作られている。
有無を言わせずギロチンで容疑者ならバンバンと処刑した国である。
だいたい、あのギロチンという処刑台の発明が即物的である。死に対する憐れみなど皆無だ。肉屋の発想である。


ホントはフランスは優雅さに覆われた恐ろしい社会なのである。



日仏の不倫に一言言っておけば、その大きな違いは社会的があるかないかである。
フランスの大衆娯楽劇は殆どがダブル不倫で起こるドタバタ艶笑劇だが、不倫はあくまで個人の領域に属する事で、それで辞任させられたり切腹させられたりするような社会的制裁は受けない。イスラムやインドには残酷な不倫制裁があるが。



この間、映画ではシネテックでミロ フォアマン大回顧展があり、旧作「ゴヤの亡霊」を見たがすごい傑作だった。それと美術展ではオルセイ美術館でのセザンヌの肖像画を一堂に集め展示した「セザンヌ肖像画」展に感動を味わった。