獅子頭伸のフランス情報;パリのつびぶやき。

在仏約40年の経験を生かしてパリを中心とした文化社会情報をお伝えしていきます。k

パリに暮らして40年以上が経ちました。情報誌パリ特派員、日本映画祭のプログラムディレクタ-などをしてきました。恐らくパリに骨を埋めるでしょう。日本映画紹介の仕事は続けています。年齢は還暦過ぎてから忘れています。そんな日本人男が触れる日常や特にカルチャ-シ-ン、またパリから見た日本の事などを書いていきたいと思っています。ヨロシク。

大西洋岸のバカンス村、ネット右翼やセザンヌ展の事など。

 イル,ド ,レでの一週間バカンスから帰ってきた。
 米国西海岸まで直航海できるフランス北部の先端にある大西洋の海岸は遠く広々として、世界の懐に抱かれている気持ちがした。岬には小さな燈台が建っていた。


 バカンス客の大半は高齢の年金生活者だった。初め200人位の高齢者グル-プが一緒に夕食をしている光景を見た時は圧倒された。大勢の爺さん婆さんが一堂に集まって晩飯を食っている。すごい迫力だった。
 
 バカンス村ODESIAは数百軒の平屋一個部屋からなっていて、その他にバ-のテラス、卓球台、娯楽室などがあった。浜辺までの道のりは10分くらいで松林が茂っていた。眼前に広がる大西洋がを見た瞬間、その広大さに感動した。


 食事は朝8時半、昼12時半、夜20時半と決まっていた。
 献立はフランス料理のフルコ-スでアントレ、主食、デサ-ト。それと小籠に食べ放題のフランスパン、更にはレッド、ホワイト、ロ-ズのワイン、それにデサ-トにはチ-ズの盛り合わせと菓子類かアイスクリ-ㇺなどの甘いものが必ず出た。
 毎晩でるチ-ズが同種で閉口したが、フランス人は喜んで食べていた。
 平均一時間超の食事だから、隣り合わせた人とは否応なく会話する事になる。フランス人は沈黙が苦手だ。


 昔、暗黒舞踏の創始者土方巽が婆さんは面白いというようなことをいっていたと思うが、女を捨てて図々しくなった婆さんとの会話はフランスでも面白かった。たわいもない冗談で笑ったが、そんな最中に時として少女時代の片鱗を見せる。


 彼女達から(prendre le cafe des pauvres=貧しい人々のカフェ)という表現も教えてもらった。これは金欠でデサ-トを注文出来ない恋人同士が相手と交わす言葉だそうで、デサ-トに代えてセックスしようという隠語表現とか。婆さん達は下ネタが好きだった。
 その内の一人に「tu veux prendre le cafe des pauvres」と声をかけられた時は喉が詰まった。


 また、隣に座ったキャバレ-とサーカスの芸人という腹の出た中年男が「一人できてるのか」と聞いてきたので、「女を紹介してくれよ」と返すと、「ここにはいくらでもバーゲンセール中の女がいるじゃないか。皆一人身だ。好きなの連れて行けよ」と言った。
 それを耳にした婆さんの一人が、「そんなことを言い続けたらだだじゃおかないよ」とすごんだ。
 更に、この男は一週間のバカンスに400万ユ-ロを使ったという話をテラスで耳にして腹を立をたてていたので、「じゃ、あんたが万が一宝籤で億の大金を手にいれたらどうするのか」と聞くと、「まず最高級車を買って、自分でデザインした」家を建てて、すごい美人の愛人をつくる」だと。「じゃ奥さんはどうするのか」というと「最も醜い男を送呈する」。そして「自分には大金を使う計画案はあるけど金がない」と周りを笑わせた。彼の女房はやはり芸人で肥満型の旧ュ-ゴ出身の女だったが、そうした旦那を馬鹿にした目線で見ていた。


 夕食後は必ず余興が組まれていた。ゲ-ム、ダンス、鉄玉投棄ゲ-ム、宝籤大会などなど。食事から遊びまで完全に人任せ。何もしないのがフランス一般流バカンスなのだ。海で泳ぐ人など稀少だった。


 ある日、砂浜で一人寝そべっている若い女性がいた。体全体のプロポ-ションが抜群でだった。乳房は小粒で腰から臀部にかけての稜線が性欲を刺激する。
 脚部はすらりと美しかった。
 大西洋の水温は冷たくて、泳ぐ人は少なかったが、彼女は日光浴が一段落すると、時々、海に入り平泳ぎで泳いだ。髪は薄い金髪系だったと思う。知り合いになりたいと思ったが、きっかけを作れるような隙はなかった。


 後日、サン マルタンという瀟洒な港町にいきイワシの塩焼き13ユ-ロのを食べていた時、彼女が母親らしい女性と散歩しているのを見た。シンプルな花柄のワンピ-スが海からの風に揺らいでいた。ただただ可愛らしかった。
 
 しかしと、別の思いが頭を横切る。
 あの美しさ、性的魅力も後40年も経てば今バカンス村にいる婆さん達と同じようになるのだろう。人の宿命は過酷だ。


 フランスは大統領が若いマクロンになってから社会の空気がすごく変わった感じがする。暗かった世相に明るさが差し込んでいる。
 様々なデジタル技術を活性化させようという政策が大々的に打ち出され、デジタルビジネスを開拓しようという希望をもつ若者が増えている。景気も最近20万人雇用が増加、年内には60万人の増加と明るい。


 国を代表する人物の顔が変わると、こんなにも社会の空気が違ってくるものか。驚いている。
 あの安部の焦点の定まらないぐちゃぐちゃの顔を見ていると暗い気持ちになる。嘘で固めた私欲私利の不透明な相貌。
 でも嘘のツケは必ず回ってくる筈だ。安部支持者のネット右翼の連中がうろたえ始め、滅茶苦茶を言いふらしているが、嘘を永遠に隠し続ける事は出来ない。


 日本にも新しい動きがで始めているようで嬉しい。


 東京新聞のジャ-ナリストの望月衣塑子さんなどはフランスの気鋭ジャ-ナリストと互角に勝負出来る。すごく勇気がいるだろうが、本来なすべきジャ-ナリストの仕事をしている。
 サラリ-マン型記者とは違って権力を恐れない女性ジャ-ナリストが登場したというのは素晴らしい。エールを送りたい。
 レイプを勇気をもって告発した詩織さん、文科省事務次官だった前川さんのようなサムライの登場。
 
 小さな独裁者安部の崩壊が始まったのかもしれない。
 
 安部が長期政権だから日本は安定しているという連中がいるが、政権の長さを尺度にすれば独裁政権で権力を握って手放さない政治家はいくらでもいる。アルジェリアやトルコなどは選挙はあるが永久政権である。そしてその腐敗は凄まじい。長さよりも政治の内容が大事なのだ。
 跳梁跋扈するネット右翼のデマの酷さは相変わらずだが安部の弱体化で、うろたえている面も見える。
 フランス女との関係でフランスの精神科医に相談したことがあるが、その時の診断が忘れられない。こういった。
 「金銭の損得関係の上だけで成り立っている人間関係は必ず破局で終わる。」
 ネット右翼の権力との関係も同じ原理で成り立っているだろう。
 ボウフラは水が洗浄されれば消えていく運命にある。


 バカンス村で中年の米国女性とも言葉を交わしたが、彼女はトランプがTVに映るといすぐ消すといっていた。
 思えば金塊のゴルフをトランプに奉献するという屈辱外交をやってのけたのは、世界の中で安部一人だけであった。


パリのオルセイ美術館では秋まで大セザンヌ展が開催中で必見と評判。
安部など大きな世界の歴史からみれば卑小な生き物に過ぎない、と思う。完