獅子頭伸のフランス情報;パリのつびぶやき。

在仏約40年の経験を生かしてパリを中心とした文化社会情報をお伝えしていきます。k

パリに暮らして40年以上が経ちました。情報誌パリ特派員、日本映画祭のプログラムディレクタ-などをしてきました。恐らくパリに骨を埋めるでしょう。日本映画紹介の仕事は続けています。年齢は還暦過ぎてから忘れています。そんな日本人男が触れる日常や特にカルチャ-シ-ン、またパリから見た日本の事などを書いていきたいと思っています。ヨロシク。

夏休暇シーズンの終わった巴里。



 




長い夏休みシ-ズンが終わり、パリには普段の生活が戻ってきた。しかしウクライナ侵略戦争を起こしたロシア独裁者プ-チンの狂気は侵略半年以上経って、よりt破れかぶれの異常さを増している。
 現在はヨ-ロッパ最大の 原発を軍事基地化し囮にしてウクライナを軍事攻撃するというとんでもないテロ戦を展開している。
 有名な女性ロシア人ジャ-ナリストは書いていた。「プ-チンは人殺しを何とも思っていない。邪魔な人間は平気で殺す。だから嫌いだ」と。その彼女も暗殺されてしまった。
人を殺せば普通は殺人罪に問われるが、プ-チンのロシア軍に拉致されたウクライナ人は子供だけで50万人、大人は数100万人単位といわれ、死者数は8万人に上ると言われている。スタ-リン、ヒットラ-や毛沢東と同類だ。彼等の根底には人間蔑視の憎悪がある。







 早朝の国際電話で10歳年下の弟が癌で死んだのを知った。享年65歳。闘病生活5年。
 澄んだ青い瞳に魅せられてつき合うようになったフランス人の彼女と同年齢だった。


 学歴競争社会に潰され、高学歴者エリ-トに劣等感を抱き続け社会の陰で自己主張出来ず目立たないように生きた。劣等感で現代日本学歴差別社会と戦えなかった。差別に押し潰された人生は哀しい。それでも幸せの時はあったと思いたい。
 65年間生きて、そして死んだ。
 ウクライナでは目下大勢の人間が一人の独裁者の為に死んでいる。プ-チンの侵略戦争犠牲者にとっての人生とはなんなのだったのか。運命の残酷さ。生のはかなさについて考えずにはいられない。





 40年以上の親友であるアルジェリア系フランス人Moaが長い夏休みから帰って来たので、パリの共和国広場にある何時のカフェで二カ月ぶりに再会した。そしてパリ市長館のあるシャトレ広場のカフェまでぶらぶら散歩をしたが、街通りは秋からの新学期前という事もあり大学や高校生風の若者で活気があり賑やかだった。特に日焼けしたバカンス帰りの若くて可愛いパリジャンㇴが目についた。彼女たちは屈託なく今の時を過ごしていた。自由な雰囲気のパリは本当に魅力だ。
 しかし、この秋と冬は厳しそうである。インフレによる物価高、ロシア侵略戦争が原因のエネルギ-危機、それに気象異変に見られるエコロジ-問題等々。
 ウクライナ戦争も何時終わるか誰も予想さえ出来ないままである。


 最近マクロン大統領は国民に贅沢の時は終わったとよびかけた。現在は世界の秩序が激変しつつあるのだ。アジア地域では中国の動向ばかりが話題で日本に対する期待の声は聞こえない。ジャパンナンバーワンと威張ってルイヴィトンを買いあさっていた頃が嘘のようだ。 
 そんな時代になっているのに巴里のカルチャ-シーンには活気があるのだからから凄いと思う。


 映画界ではカンヌ映画 祭関係では受賞作と題作が続々と公開されるだけでなく、ある視点部門、監督週間、批評週間と3部門それぞれの全作品上映企画もあるし、更に強力な新作映画もこの時期に集中して公開される。
 演劇界ではパリ最大の国際前衛演劇祭が9月から12月迄開催、パリ市内36の劇場で多種多彩な世界の前衛舞台が上演される。
 日本からは演劇人3人の舞台作品が参加(sumiko haneda,yuri yamada,tomohiro maeda)注目されているが、今回の目玉で必見の発見として挙げられるのは国名を聞いたことはなかったが西インド諸島の旧白人植民地だったというカーボベルデ共和国出身の女性ダンサ-で振付師Mariene Monteitasの舞台。別々の劇場で3作品が特集として公演される。
  
 しかし、それにしても全体のプログラムをみて知っている名前はベルギ-の有名女性ダンサ-「アンヌ、テレサ、ケエ-スマエケ-」(ルーブル美術館で)くらい。世代は完全に交代しているのを痛感させられた。それはまた新たな発見の楽しみともいえる。


 美術界ではポンピドゥーセンターでの「1920年代ドイツの芸術作品展(9月5日終了)。ファシズム台頭期のドイツ美術界の様相を伝える見応えある内容だった。中でも代表的画家otto dixの絵画作品が多く、当時のデカダンスな気分に触れることが出来た。



















 旧商業取引所を改築したユニ-クな循環型の綺麗でお洒落な美術館ピノコレクションでは「une secode d'eternite(永遠の一秒)というコンセプトでの前衛美術展が来年1月2日迄開催中。鉄線網目の大きな電光インスタレ-ションに漫画お化け少女の肖像が亡霊のように現れては消える作品、オペラを歌う天才ソプラノ歌手マリア カラスのホログラフ、水で出来ているように見える丸い腰かけ、幾つも吊り下がった電球の塊、宙でゆっくりと動く円形の鏡、マリリン モンローの映像がある劇映画の中に現れては消える作品等。







 エクスポのカタログには「その過去に疲れず再訪を繰り返す未来の幽霊」と書かれていて難解でなんだかよく分からないが、会場で共通していた視点は日本語の「かりそめ」という言葉がピッタリだった。意味はよく分からなくても見た目に楽しい美術展である。
 これ以外でも秋から冬にかけて巴里では見逃したくない美術展が目白押しだ。その一端を紹介しておく。


-まず76歳になる超現実的な奇態な具象画で有名なフランス人画家Gérard Carousteの大回顧展(ポンピドゥーセンター、2023年1月2日迄)。
-「千夜一夜」展(palais de tokyo,10月11日から2023年29日迄)
-「静画の歴史展」(ルーブル美術館、10月12日から2023年1月23日迄)
-「アフガニスタン仏像」展(ギメ東洋美術館、10月26日から2023年2月6日迄)。
-「ボリスミカイロフ、ウクライナの日記」展(ヨ-ロッパ写真美術館、9月7日から2023年1月15日迄)
-「モネと画商ミシェル」展(ルイべトン財団、10月5日から2023年2月27日迄)
-「エドワード ムンク絵画」展(オルセイ美術館、9月20日から2023年1月23日迄)
-「天啓のベニス」展(グランパレ、immersif美術館、9月21日から2023年2月19日迄)など。


早く侵略者の殺人鬼プ-チンが滅びカルチャ-影響力で世界が平和になることを願って止まない。

8月のパリ。


殺人狂独裁者プ-チンチンによるウクライナ民主主義国家の破壊と国民皆殺しの侵略戦争は夏に入っても続いている。
 毎晩22h-24hのLICニュ-ス番組は必ず戦況ルポをやるので欠かさず見ているが既に民間人死者だけでも5千人超えるとか。


 最近は最後まで徹底抗戦をしていたウクライナ兵士が捕虜交換で自由になることを条件にロシア軍に降伏し刑務所に入っていたが、捕虜交換で自由解放どころか、その内53人が拷問を受け虐殺された事実が暴露されつつある。


 しかし、TV局LICでの 討論ではロシアが石油を止めれば大不況になるからロシアに対する制裁は解除すべきだというだけでなく、ウクライナはロシアの一部だったのだから早く和平の妥協をすべきだというインテリさえいたので驚いた。
 
 当初ウクライナ大統領ゼランスキ‐を民主主義防衛のヒ-ロ-と諸手を挙げてフランス全メディアが絶賛したころとはト-ンが違ってきているのだ。


   一方、目下フランス国民の頭はバカンスで一杯だ。全て問題は後回し後回し。
   フランス人はバカンスに行けない事を人生最大の不幸と考える。
 ところがバカンスに行けない低所得層も大勢いる。
 だからフランスには貧乏な家族、特に子供に対して海や山へのバカンスを無料で提供する福祉サ-ビスが幾つもある。


 8月のパリは有名な美術館や大劇場は軒並み閉まり、映画館は旧名作再上映が大多数となる。街を歩いても英語を筆頭にイタリア、スペイ、アラブ、それに中国人が多く日本人は目立たない。バブル時代とは完全な様変わりだ。
 またアビニヨン際演劇r祭、アルル国際写真展など主なイベントは地方で行われ、パリの場所よってはパン屋やタバコ屋などでさえ閉まってしまう。


 昨年に続いて今夏もバカンスに行けそうもない。


 澄んだ綺麗なブル-の瞳につい魅了されしまった10歳年下の新しい彼女はカネがないのでバカンスに出ないというし、ウクライナ国民の悲惨を考えたら地中海などの浜辺で日焼けして過ごす気分にもならない。


 しかし最大の理由は次々と大きな出費が続いた為である。
  
 白内障手術後の眼鏡の値段が約7万5千円、
 電気代の値上げで一年分超過料金が約6万8千3百円、
 歯手術の見積もりが約19万4千5百円。脚も弱っている。
 老いるとは体が次々と破損,そ度毎に修理費が必要なことだと痛感させられる。

  
 この支出だけでも不安なのに必要生活費がインフレで軒並み値上がりしている。
 
 毎朝9時に来てくれる移動看護婦は朝5時に起きて午前中だけで26人の患者を車で見て回るそうだが、ガソリン代高騰で幼い男子が2人いるし月末は一円も残らないといっていた。
 それでも8月は夫の故郷ポルトガルで3週間の夏休みを家族で過ごすというから、フランス人にとってバカンスは聖域なのだ。
 
 バカンス明けの秋からはロシアのガス供給停止、更なる原油値上げなどで大不況が予測されていて、フランス政府は今から耐久生活への心構を呼びかけている。不安だ。
 
 今夏のパリは秋からの不安が漂うが、それでもカルチャ-シーンが完全な不毛地帯となるわけではない。
 
 パリに残る人々の為に以下面白いイベント紹介しておきたい。

1、セ-ㇴ川岸の海辺。セーヌ河岸に海の砂を運び込みビ-チに。プ-ル、レストラン、ダンスや音楽の余興もあり海辺のバカンスが味わえ好評。8月一杯まで。

2-セーヌ川辺での野外ロックコンサ-トフェスティバル、Boulpgne pont de saint cloude.8月30日迄。
3-大カラオケフェスティバル、cite fertille,14 av edouard vaillant 、pantin.8月19日迄。
4-美術i館では他に-印象派マネの傑作「水蓮」などで有名なオランジェリー、改築新装されて評判のパリ市美術館のCarnavalet;東洋各国の貴重な名画を一堂に集めているが余り知られていないCemushiなどがオープンしている。
5-ルイヴィトン美術館でのア-ティスト5人によるユニ-クな色彩絵画展「La couleur en figure」、8月29日迄。
6-ポンピドゥーセンターではナチス台頭期に活躍したア-ティストAugust Sauderの作品を集めた「Allemagne/Anée 1920/Nouvelle objective/」、9月5日迄、タイムリ-な企画で見逃せない。
7-「アメリカ千の顔」と題した76歳になる米写真家Jay Ross写真作品展、9月18日迄 写真中央センタ-、
8-ロマンティックのヒロイン展、romantique美術館、80点数を展示、9月4日迄、16 rue chaptal.
9-Love song展,日本の写真家アラキなどの写真を展示、9月23日迄。素晴らしい国際写真専門美術館で必見。




























続いては10,大地をテ-マにした前衛美術展「Reclamer、la terre(大地の要求).9月5日迄、前衛ア-トで人気のpalais de tokyoで。

11-サンロ-ラン美術館でのファッション作品展、8月11日迄。
12,選抜されたて5人の新進アーティストがポン ㇴフなど、それぞれ選ばれたセ-ㇴ川にかかる5つの橋でインスタレ-ションを展示してる美術イベント、9月23日迄等々がある。

 この他でもsunsideなどの有名ジャズクラブは夏でも無休だから何時でもジャズを聴きにいける。

 
 軍事力で殺人を続ける狂気よりも、最後はカルチャ-の力が勝つと信じたい。
 
 現在、パリは平和で、何よりも自由な国際文化都市である。

戦争と平和とパリカルチャ-シ-ン。






時はあっという間に過ぎる。
ブログを書く暇もないままロシ,ア独裁者プ-チンがウクライナへの侵略戦争を始めてからもう三ヶ月以上が過ぎた。


この間、ロシア軍の猛爆撃でウクライナの幾つかの主要都市が無残な廃墟となり、夥しいウクライナ女性がレイプされ、数千万に及ぶ難民が発生した。
プ-チンはヒットラ-と同じ戦争犯罪者だと思う。


フランスのテレビでロシア国営テレビの時事討論番組を見る機会があったが、ロシアのウルトラ帝国主義者が第三次世界大戦を扇動し、「パリなど原爆サイル数発で壊滅出来る」、「戦車部隊で進軍してシャンゼリゼ大通りのカフェでエックスプレッソを呑みに行こう」とか、とんでもない無茶な発言をしていた。


フランスの対応は冷静だが、ウクライナ移民受け入れ、インフレによる物価高、ガソリン値上げなど一般市民は購買力低下で生活も厳しくなっていて、この侵略戦争はフランス社会にも暗い影を落としている。 


一方でパリ市民は日々の生活に追われて暮らしているものの、戦火にある地獄のウクライナとは違って自由と平和は享受できている。


そんな中パリのカルチャ-シ-ンでは見逃せない美術展、イベント、フェスティバルが目立つ。
美術jではアメリカ同時代美術を代表する彫刻家「Charles Ray」展(6/6迄)。同氏は69歳になるがフランス初の回顧展だ。デビュ-時の写真作品から、ス-ツ姿の巨人女性、路上生活男の巨像、有名な美少年の白い立像、くたびれた老人っぽい男が乗馬しているステンレス像など約20点を展示。
「重力の浮遊する身体、催眠状態に引き込まれる」などと評価されている。会場は証券取引所=Bourse Commeceをフランスの富豪フランソワ ピノが私財を投じて改築した超モダンで粋な美術館。内部は展示ギャラリーが円環回路で結ばれ





ているユニ-クなもので、それだけでも一見の価値がある。建築家は日本の安藤忠雄だ。





エッフェル塔近くにある現代美術館では「Eugène Leroy」展(8月28日迄)。20世紀で最も重要で注目すべき画家だといわれるが長い間無名のまま埋もれていた。今回はデッサン、油絵など合計150点を展示している大規模なもので全貌を明らかにしている。具象とも抽象ともつかない荒々しいタッチの独特な絵画作品で魅力があり、発見が期待できる。


この他ではオランジェリー美術館でのセザンヌやモネなどの大物の名画を一堂に集めた印象派絵画展、ファッション美術館での「Love Bring Love」展、オルセイ美術館での「Sophie Calleと彼女の招待客」などが面白そう。


7月11日から31日まではfestival paris l'été夏のパリフェスティバルが開催する。
これは長い夏季バカンスシ-ズンに入るとパリカルチャ-シ-ンには何もなくなってしまう事から、その空白を埋めようと企画されたもので、当初は小粒なフェスだったが年々人気を高め規模も拡大。今では大勢のファンを動員するまでになった。


演劇、ダンス、音楽、サ-カス、インスタらションなど、市内の各会場に分けて多種多彩な27本の作品をプロブラミング。
中でも期待作は、アンジェリン プレジョカジのダンス作品「ボレロ」(7月11,12日)と「G.U.I.D」(7月14日-16日、Grand palais éphémèでの「The Dcing public(mette ingvarsten振付ダンス作品、7月12日-16日)も興味深い。更にウクライナ女性集団による「ウクライナファイア-」(7月14日、ルモンフォ-劇場),集団Cirkvostによる「空中演劇」(7月15日-17日),「ポルトガルの夜」(7月17日)。
暴力,貧困、人種差別、社会の悲惨など怒りをもって現フランス社会の病巣に切り込んだ問題作「EN FINIR」(7月19日-20日),「ストリップ」(7月20日-22日),
「アフリカモダンダンス」(7月20日-23日)など。新鮮な発見がありそうだ。


世界現代音楽のメッカIRCAM音楽研究所の6月-7月のプログラム「ManiFest」も是非行きたい内容だ。コンサ-ト数は約32作品。
抜群なコンサ-トホ-ルCité de la musiqueでリン リアオ指揮、パリ交響楽団による「シーズンオープンコンサ-ト」(6月9日)と中堅の女性作曲家Anton Webenの「Webern +」(6月10日)、
ボ-カルと人口頭脳組合せイベント「Deep Voice,Pris」(6月11日)、現代音楽を代表する作曲家Iannis  Xenakisの作品で過去20万人を動員している「Le Polytop」(6月11日、Ircam)。
シュ-ベルトと人工頭脳「Anima」(6月11日、ポンピドゥーセンター大ホ-ル),またボーカルと人口頭脳の組み合わせ「Deep Voice,Paris」(6月15,16,17日),
必見の「Musiqes-Fiction:La Collection(6月18日-25日、T2G劇場),
更にXenakisの2作品「Polyiopes:Rrouverture de l'Espace de projection」(6月21日-7月2日)と「Révolutions」(6月26日迄),最後は数学者で現代音楽家であるAlan Turingkの作品「Alan T」。


演劇では太陽劇団本拠地劇場に招かれて公演(7月15日迄)する5輪車劇団「どん底のエレクトル」が期待できそう。
パリに残酷な戦争がなくカルチャーを楽しめる事の幸せをありがたいと思う。平和はすばらしい。どんな収穫があるか楽しみである。