獅子頭伸のフランス情報;パリのつびぶやき。

在仏約40年の経験を生かしてパリを中心とした文化社会情報をお伝えしていきます。k

パリに暮らして40年以上が経ちました。情報誌パリ特派員、日本映画祭のプログラムディレクタ-などをしてきました。恐らくパリに骨を埋めるでしょう。日本映画紹介の仕事は続けています。年齢は還暦過ぎてから忘れています。そんな日本人男が触れる日常や特にカルチャ-シ-ン、またパリから見た日本の事などを書いていきたいと思っています。ヨロシク。

時は流れ、着物展とウクライナ国立バレ-公演が大人気。

  老人になればヒマになるものだと思っていたが違ってた。何故か分からないが時間がない。まとまった事が出来ないまま時はどんどん流れていく。


 ロシアのプ-チンによる残虐なウクライナ侵略戦争も間もなく一年になろうとしている。
独裁者たった一人の意志で何十万人もの人間が殺害され、何万人もの女性が強姦され多くの戦争孤児が生まれている。恐ろしいと思う。


 この年末年始はあれこれとやっている内に過ぎてしまい既に1月中旬も過ぎてしまった。


今更だが、皆さま新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。


 2023年の干支はうさぎ。どういう年になるのか。
 しかし、年頭の予測ごっこには興味がない。その時々で生活していくのが一番だ。ケセラセラである。
 大作家クンドラは人生を上下志向で考えるのは間違いで局面局面で考えるべきだというような事を言っている。
  人生、場面展開の不連続。いい発想だと思う。




 去年秋以降のパリカルチャ-シーンでは大人気となったexpoとバレエ公演があった。


 一つは日本好きだった故ジャック シラク大統領記念として出来たアフリカ、アジア芸術専門の大美術館Quai Branly(37 quai blanly.)での「着物展」。
 去年11月22日開幕、今年5月28日迄開幕中だが評判が評判を呼び入場券はすぐに手に入らないという美術展では稀有のヒットとなっている。
 フォロ-してる時代は江戸時代から現代21世紀まで。展示数は厖大。小袖、振袖、打掛、帷子などなど、着物の種類も多様だ。着物の全てを網羅している。



 ベルにサ-ジに招待されていた地元フランスのジャ-ナリストは引き込にまれるよう鑑賞していた。
 今パリで絶対に見逃せないexpositioの一つである。
 日本人が見ても誇りを抱ける内容だ。
 最近、日常生活で日本が好きという何人かのパリジャンヌと偶然に知り合う機会があって驚くが、当然だろうなという気がしている。



 もう一つはロシアの侵略と戦い続ける戦争下の国ウクライナ国立バレエ団の公演。場所は大理石の綺麗な私立劇場テアトル シャンゼリゼ。演目はロマンチック クラッシク バレエの名作「ジゼル」(12月21日-2023年1月5日)。
 プ-チン独裁ロシアの侵略戦争を受けて以来、国外での公演はこれが初めてだとのこと。



 戦火のウクライナからパリに来たクラッシック バレエ公演という事で大勢の観客が集まった。
 農家の美しい娘が貴族の青年を好きになり最後は狂ってしまうという悲劇の恋物語だが、細身のプリマドンナはダンスは優美で美しく魅力があった。
 主演の男性ダンサ-のダンスも力強い。特に舞い上がる瞬間の跳躍力は見事だった。その他のダンサ-も粒が揃っていて群舞はヨカッタ。


 単に戦争の国のバレエ団という好奇心を超えて、観客は水準の高い同バレエ団による「ジゼル」に感激。ブラボ-の拍手が長く続いた。
 同国立バレエ団は過去クラッシック バレエのアカデミーである黄金の星賞を受賞している。


 スラブ民族が支流だった主義連邦の旧ソ連衛星国の一つだったウクライナ。民族の源流はタタ-ル人と言われるが、今回の公演をみて同国は西欧文化圏に属するとの思いを深く抱かされた。
 今やプ-チンは陰で援助する残酷なロシアのプライベ-ト軍事組織ワグナーが刑務所から大量に集めた私兵を銃撃、砲撃の人肉楯として使っている。狂気以外のなんでもない。
 こんな中でも日本の国家議員の鈴木宗男などはプ-チンを正当化し支持続けている。
 裏にどんな事情があるのかは分からないが、こうした人物が侵略国家の手先となるのだろうと思う。

日仏文化交流に風穴。パリ日本文化会館で八代亜紀の演歌コンサ-ト。






ウクライナ解放戦争は依然と続いている。人が死ぬことを屁とも思わない殺人鬼プ-チンは早く滅亡して欲しいがゴキブリのように権力にしがみついて離れない。だがいずれ正義の鉄槌が下ると信じたい。
「演歌の女王」といわれているらしい八代亜紀のコンサ-トがパリ日本文化会館(10月21日と22日)であった。
昔リスボンで初めてポルトガル歌謡「ファド」を聴き感動。
その時に曲も歌詞も「日本の演歌に似ているな。」と思った事がある。
それ以来「ファド」の大ファンだぐ好きだが当然日本の演歌も好き。


 パリで紹介出来すべきだと思っていた。


 パリ日本文化会館のプログラムに「矢代亜紀、演歌コンサ-ト」とあったのを見つけた時はうれしく、すぐ行きたいと思った。


 しかしチケットを買おうとして一瞬迷った。


 パリではオペラだけでなく世界一流の音楽公演がある。それに演歌ならネットでも視聴できるし。わざわざ出かけていくのが億劫になった。


 ところがそれを聞いた青い瞳をした65歳のフランス人の恋人が二枚チケットを買ってしまったので、一緒に行った。


 キャパ500席のホ-ルは満員。客層は日本人よりフランス人の方が多かったようだ。


 演奏はオ-ケストラでなくピアノ、バイオリン、ギタ-二奏者、ドラムという小編成。


 出だし八代亜紀は華やいだ着物姿で登場、「雨の慕情」、続いて「涙恋」を歌う。


 フランス人が演歌歌手の実物をみて歌を直接聴く初めてに違いないが、客が乗って引き込まれているのが会場の雰囲気で伝わって来た。


 一番思いれがあるといった「かーちゃんのためならエンヤ-コラ-」の歌だけは背後大画面の字幕付きで歌いブラボーの声が。


 着物からドレス姿に変えてジャズも歌った。


 中盤、フランスの人気 シンガーソングライターGALOGERO(ガロジェロ)が登場。
 彼のオリジナル曲をフランス語と日本語のデュエットで歌った。


 呼吸はピッタリ。すばらしい日本語とフランス語のアンサンブル。これぞ見事な異文化フュージョンと思ったら思,わず涙がでてしまった。


  最後はヒット曲の「舟歌」で締めて喝采を浴びた。


 一緒に行ったフランス人女性はc' est formidable(すばらしい)と興奮。拍手をし過ぎて手が痛いといった。


 生の演歌コンサ-トに行ったのは人生初体験だったが、矢代亜紀のファンになってしまった。


 このコンサ-トだけでなく同文化会館では山田洋次監督の[フ-テンの寅さんシリ-ズ」の全作品をプログラミング、全上映回とも満員だったとか。
 好きで好きで全作品を見たといい「寅さん映画の良さ」を熱っぽく語るランス人男性とも会った。


「寅さんの日本人情喜劇や演歌などはフランス人には絶対受けない」という過去のジンクスを破る成功だった。
 フランスのカルチャ-シ-ンはどちらかというとエリ-トや知的教養志向。


 今回の日本文化会館のプログラムは日本庶民カルチャ-のプレゼンテーションで、従来の日仏文化交流に風穴を開けたような面もあり興味深い。

パリ写真美術館で開催中のウクライナ人写真家の写真展が人気



毎夜22時-01時、民報ILC局の報道番組が必ずウクライナ戦争の進展状況について興味ある討論を組むので、それを見てから寝るのが習慣になってしまっている。
プ-チンはかなり追い詰められているようなのでうれしいが、個人的には少しスランプに陥っているようだ。ブログもなにをどう書いたらいいかよく見えなくなっている感じがある。
 今フランスの社会状況はウクライナ戦争の影響で悪くなっている。
 ロシアのウクライナに肩入れする欧州に対する報復策で石油、ガスが輸入量が減少、それが原因で様々の物価が値上がりしているだけでなく、フランスも世界的なインフレの波に巻き込まれている。
 最近は石油精製会社の従業員が給料値上げ要求でストライキに突入。ガソリン代が高くなっているのに加えてガソリンの供給状態が悪化。フランス人の大半は車で移動するから大混乱になりガソリンスタンドには車の長蛇の列ができ、苛立った客の間で喧嘩沙汰も起きたという。毎朝通いで来てくれる看護婦は半日で40人前後の世話する人を車で巡回するそうだがガソリン給油待ちにすごい時間を取られ「まったく地獄」と嘆いていた。
 またパリ郊外の町の新現象として思春期の少女の売春も話題になっている。
 これは郊外で麻薬のディ-ラとして小銭を稼いでいた若い不良が売春斡旋の方がカネになると気づいた事から始まったらしい。客を見つけて仲間内の少女に売春を勧めて紹介料で稼ぐ。本当の売春組織でないから少女は客の住まいなどで売春するとか。料金はまちまちだが30分50ユ-ロで身を売らされる子もいるという。
 フランス映画界もネットフリックスなど新たなプラットホ-ムの流行と人気という時代の大変化の荒波に襲われ全体の総映画館客数が大減少。特に名画館系は存亡の危機に直面させられている。この間、こうした芸術映画系のプロヂューサー、俳優、映画配給会社の人たちが集会を開き危機から脱出する為に芸術系映画の大切さや国の支援を求めるアピ-ルをした。
 ロシアのウクライナ侵略戦争はフランス社会にも大きなマイナスの影響を与えているが来年一月15日迄、新しくパリ4区に出来た素晴らしい欧州写真美術館(La maison  Européenne de la photographie: Fourcy通り57番地)でウクライナ出身の写真家ボリス ミハイロフの回顧展が 開催中で人気だ。ここは早くもフランス写真芸術界のメッカになっていて必見の場所である。 
 





 同アーティストは1938年ウクライナのkharkiv市生れだが数年前からベルリンに在住して活動、世界で高い評価を受けている。
 展示写真作品数は800点近く。現在の戦争写真は一枚もなく全てはウクライナで庶民のいる興味深い日常風景を撮ったものが大部分だがエロティックな主題の写真もある。
 美しいシリ-ズ「昨日のサンドイッチ」、1970年代共産主義政権時代の暮らし、ソ連支配下の貧しい街角風景、軍服姿の若者たちなどなど。総じて作品には寂しく喜びを奪われた雰囲気の印象がある。「ウクライナ1970年代の政治批評とパラノイアと霊魂を反映している。」(ルモンド紙)などと評価されている。興味深い必見の写真展といっていい。