パリの亡命者と難民。
大好きな寺山修司の短歌の一つ。
「マッチするつかのま霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや。」
この歌をパリに置いてみるとより深く切実に響く。
パリには昔から亡命者が多い。
ピカソ、ダリ、ヘミングウェイ、ヘンリ-ミラ-などに限らず世界的に有名な異邦人芸術家も大勢活躍している。政治家の亡命者としてはレ-ニンやホメイニなどの名前が浮かぶ。
「亡命ア-ティストのアトリエ」というイベントに招待され行ってきた。
場所は「102」というところ。
パリの北端貧しい地域18区のpoissoniers.通りにあり番地がそのまま名前になっていた。
周辺は庶民と移民が混じった下町。会場は大きくて綺麗なアパルトマン内の2階(日本の一階)にあった。内部は広く贅沢。幾つも部屋があり各室内で若い亡命ア-ティストの活動が紹介されていた。
長くパリにいるがアパ-トを開放してのイベントというのは初体験である。
大パ-ティのように訪問者は飲み物のグラスを片手に部屋を出入りして気儘に作品を鑑賞している。
知的で品のある可愛いパリジャンヌが大勢いたので「なんでこんなに可愛い子ばかりいるのか」と驚いた。
最近のパリはセクシ-ファションで拝金主義の女がやたら目立つなと思っていたので、それとは別人種の女達も大勢いるのを知った。
アパ-トは貧困者救済で有名な故アベ ピエ-ル神父が創立した慈善団体「マイュス」の所有物。普段は空室なので使用料は無料との事。借りたら千ユ-ロ単位だろう。
下町の片隅で、こういうイベントが行われている。パリはまさに移動遊園地。毎日どこかでなにか異色の文化イベントが起こっている。
でも簡単に亡命者支援といっても、亡命者たち自身の精神生活は苦しいものだろう。例えば、こうした指摘。
「フランスで外国人は正反対の二つの態度のいずれかをとるしかない。何としても溶け込んでしまい、同一化し、自分を失い同化したしまうか。あるいは逆に屈辱や侮辱を受けて、孤独の中に閉じこもってしまうか。フランス人には、、決してなれないというハンディを知りぬいているが故に。」(ジュリア クリスティヴ著「外国人、、我々の内なるもの」。この後者の典型例は複製芸術論で有名なドイツ人のベンヤミンだろう。結局、パリで自殺した。
今回のイベントは絵画、デッサンなどが大半で、国別でも殆どはモロッコなどの北アフリカ人系。アラビア語の表示もあった。支援の一環としてフランス語の無料講座も開くそうだ。
対象としてる亡命者がパリで現在大問題となっているアフリカからの大量難民と二重写しになる。
主催は若い女性の団体で、今年6月に設立されたばかりというが、パリ市、文化省の助成金が早く下りているのも、難民情勢と無縁ではなさそう。
パリの街角では「シリア人」とボ-ル紙に書いて金を催促する乞食が目立つが、難民と亡命者の区別は、そう簡単ではなさそうだな。
受付の可愛いマドモアゼルの説明を聞きながら、そう思った。
パリはこれだから貧乏でも面白い。
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